2020 Fiscal Year Research-status Report
花弁開閉運動に関わる水チャネル・アクアポリンの機能調節機構の解明
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19K06024
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Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
根本 圭一郎 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 園芸資源研究部, 主任研究員 (60566727)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アクアポリン / 花弁運動性 / カルシウムシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
被子植物において花は唯一の生殖器官であり、蕾からの花弁展開や外部刺激に応答した花弁の開閉運動は生殖効率を左右する重要な運動性である。花弁の運動性は膨圧運動に起因しており、水チャネル・アクアポリンPIP2のリン酸化依存的な活性化が、その運動性を制御する重要な制御機能の1つであると考えられている。しかしながら、現在までにPIP2の活性化に関与するプロテインキナーゼは同定されておらず、花弁運動性の詳細な分子機序は不明である。そこで、花弁開閉運動性が知られている園芸作物リンドウを対象にし解明を試みている。 本年度は、まず、花弁内で高発現するPIP2遺伝子が花弁運動性に関与するかどうかを明らかにするために、VIGS法によってPIP2遺伝子発現抑制個体を作出した。PIP2遺伝子の発現抑制個体はコントロールと比較し、著しい運動性の抑制が確認されたことから、PIP2遺伝子機能が花弁の運動性に大きく関与することが示唆された。さらに、PIP2の水輸送活性を評価するために、酵母スフェロプラストを利用したwater transport assayを実施した。本手法は、酵母スフェロプラストを低浸透圧処理することで、細胞内へ水が急激に流入し、結果、破裂する現象をリアルタイムで測定するものであり、細胞数の減少率は水輸送活性を反映している。アッセイの結果、リンドウPIP2を高発現させた酵母スフェロプラストはコントロールと比較して、優位に細胞数が減少したことから、リンドウPIP2は水分子を輸送するチャネル活性を有することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においても最も重要なポイントであるPIP2遺伝子機能と花弁運動性の関係を明らかにできた点は、非常に大きな成果であると考えられる。また、生化学的解析が困難なPIP2の機能を評価することが可能な実験系を構築できたので、今後の解析が飛躍的に進むことが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
PIP2をリン酸化する新規CPKが、PIP2の水輸送活性調節に関与するかどうかを酵母スフェロプラストを用いて解析する。さらに、VIGS法によってCPK遺伝子発現抑制個体を作出し、花弁運動性やPIP2リン酸化動態を解析することで、CPKによるPIP2分子のリン酸化が花弁運動制御に関与するかどうかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
参加予定であった学会および出張、技術講習等がCOVID-19の影響ですべてキャンセルになったために、そのための旅費予算を次年度にまわした。COVID-19の状況を判断しながら主に出張等の旅費として使用する予定である。
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