2019 Fiscal Year Research-status Report
レタスの結球に関わる遺伝因子の同定およびその育種利用
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19K06037
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
小松 憲治 東京農業大学, 農学部, 助教 (90594268)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | レタス / 結球性 / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
結球型レタス(玉レタス)の集団の中から、遺伝的要因により突発的に非結球型の個体が発生する現象が存在する。我々はこれを「遺伝的非結球化現象」と呼ぶ。この現象の発生パターンは、以下の2つのケースに分けられる。1つ目のケースとして、自殖を繰り返しても結球型しか現れない遺伝的に異なる2つ系統を交配させた場合に、その後代分離集団において一定の割合で非結球個体が現れる場合がある。両親が持つ2つの潜性遺伝子が合わさることで非結球化すると考えられる。2つ目のケースとして、集団で維持される系統の中から突発的に非結球個体が発生する場合がある。集団の中で潜在的に維持される非結球遺伝子がホモ化した際に発生すると考えられる。我々はそれぞれの「遺伝的非結球化現象」に関わる遺伝因子の同定を進めている。1つ目のケースに関わる遺伝因子の同定のために、玉レタス系統AとBを掛け合わせ親としたF2系統において発生する非結球個体を対象に、非結球化に関与する遺伝子座を限定する作業を進めている。本年度は次世代シーケンサーから得られたデータの精査から、前年度よりさらに非結球性に関与するゲノム領域を限定することに成功した。また限定された遺伝子座内に、リファレンスゲノムが持たない未知配列とそれにコードされる遺伝子を見出した。2つ目のケースに関わる遺伝因子を同定するために、本年度は商業レタス品種や、育種素材系統から突発的に発生した非結球系統を親としたF2集団を育成し、バルクシーケンシング法に基づくQTL解析を実施するためのゲノムシーケンシングを実施し、2つのF2集団から配列データを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
玉レタス系統AとBを掛け合わせ親としたF2系統の用いたRAD-seq多型データの精査から、非結球性に関わるゲノム領域をさらに限定することができた。これまでの研究から、非結球性をもたらす遺伝因子が、リンケージグループ5とリンケージグループ9に座乗することがわかっている。リンケージグループ5に座乗する系統A側の対立遺伝子が非結球性に関与し、リンケージグループ9に座乗するは系統B側の対立遺伝子が非結球性に関与する。本研究の開始当初、非結球性への関与が示唆されていたTCP型転写因子は、さらなるゲノム領域の限定によって候補遺伝子から外れた。また、ゲノムデータの精査から、リンケージグループ5には系統A系統だけが有するリファレンスゲノムには存在しないゲノム領域が存在し、そこには植物ホルモン生合成の恒常性に関与する因子に相同なタンパク質をコードする遺伝子が座乗していた。同様の遺伝子はリンケージグループ9で限定された非結球因子が座乗する領域にも存在していた。そのため、その遺伝子が非結球性に関与している事が疑われた。本年度は、商業レタス品種から突発的に発生した非結球系統を親としたF2集団を育成し、バルクシーケンシング法に基づくQTL解析を実施するためのゲノムシーケンシングを実施し、2つのF2集団から配列データを得た。現在、非結球性をもたらすゲノム領域の特定、および玉レタス系統AとBから見出された非結球因子との関連について分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAマーカーによるさらなるゲノム領域の限定を進める一方で、リファレンスゲノムには存在しないゲノム配列上に存在した遺伝子の遺伝子発現解析など、遺伝子の機能的特徴を捉えるための実験を進め、今後ゲノム編集等による本格的な遺伝子機能解析を行うに値する候補であるかどうかの見極めを行う。
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Causes of Carryover |
当初、ロングリード型シーケンサーを用いたゲノムシーケンシングを予定したが、別の予算により実施されたため残額が生じた。シーケンシングを計画していた系統は、他の研究課題でも研究材料として使用されており、別研究課題の予算に余裕が生じたことからそちらの研究費でシーケンシングを実施したため、本助成金に残額が生じた。翌年度分として請求した助成金は、QTL解析に用いているゲノム解析サーバーの老朽化が進んでいるため、その老朽化部品の交換費用、または新規のゲノム解析サーバーの取得費用としての使用することを検討している。
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