2020 Fiscal Year Research-status Report
リンドウにおける外来遺伝子フリーのゲノム編集技術の確立
Project/Area Number |
19K06038
|
Research Institution | Iwate Biotechnology Research Center |
Principal Investigator |
高橋 重一 公益財団法人岩手生物工学研究センター, 園芸資源研究部, 研究員 (10600033)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ゲノム編集 / リンドウ / 園芸作物 / アグロバクテリウム / 外来遺伝子フリー |
Outline of Annual Research Achievements |
様々な作物においてCRISPR/Cas9システムを用いたゲノム編集体の作出が精力的に展開されている。最近は特定の機能や特性を付与した実用を目指した応用研究も盛んになっている。実用を考えた場合、外来遺伝子を有さないゲノム編集体を作出することが強く求められるが、現時点ではアグロバクテリウムを介して植物ゲノムにCRISPR/Cas9システムを組み込み遺伝子組換え体を作成し、ゲノム編集を行うことが一般的である。交配により当該システムを除去しnull-segregantを得た報告もあるが、栄養繁殖性の植物やヘテロシス性の高い植物への適用は、品質の維持という観点から困難である。DNAフリーの系によるゲ ノム編集も試みられているものの、効率的な系は確立されていない。そこで本研究ではリンドウ等の園芸作物を対象に、アグロバクテリウムを介してCas9およびguide RNAを植物細胞内で一過的に発現させることでゲノム編集を可能とする外来遺伝子組み込みフリーの系の確立を目指している。 令和元年度は効率的なゲノム編集が行われる条件検討を最終目標のリンドウと分化速度の速いタバコで進めた。結果、タバコにおいて標的遺伝子としたフラボノイド合成酵素遺伝子であるNtF3Hについて、選抜薬剤フリーの条件下でゲノム編集が行われたシグナルを持つカルスを複数個選抜した。 令和2年度は得られたカルスからシュートを再分化させ、再度サンガーシーケンスにより対象遺伝子の配列を確認したところ、選抜した全てのカルスでゲノム編集のシグナルが失われていた。ゲノム編集されたことにより野生型遺伝子を保持する周囲の細胞に押し負けた可能性やカルスでサンプリングを行った部位以外ではゲノム編集がされていない可能性などが考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
薬剤選抜フリーの条件下で選抜したゲノム編集が起こったシグナルを保持するカルスを再分化し、外来遺伝子フリーのゲノム編集個体の取得を目指したが、選抜を行ったカルスから再分化された個体は成長に伴って、ゲノム編集のシグナルが検出できなくなり、実験系の条件について再検討する必要があるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終目的はリンドウへの適用であるため、リンドウに焦点を絞って実験を進める。アグロバクテリウムの一過的な感染によるゲノム編集効率を迅速に検出し効率的な系を確立するために、蛍光タンパク質であるGFPを発現する遺伝子組換えリンドウを活用し、GFPを標的にゲノム編集を行い効果的に消光する条件を明らかにする。明らかにした条件を用いて花色や花形などに関わることが明らかとなっている遺伝子についてゲノム編集を試みる。
|
Causes of Carryover |
当初の研究計画で考えていた実験計画では再分化後のゲノム編集個体の次世代シーケンサーを用いた大規模解析を予定していたが、再分化後のゲノム編集個体の取得に至らなかった。それ に伴って試薬類の消費量が計画量を下回ったため、次年度使用額が生じた。
|