ニホンナシ発芽不良発生における概年リズムの役割の解明とリズム同期による被害軽減策

2019 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 19K06040
• Research Institution: National Agriculture and Food Research Organization
• Principal Investigator: 伊東 明子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 上級研究員 (30355383)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 喜多 正幸 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, ユニット長 (10343972)
• Project Period (FY): 2019-04-01 – 2022-03-31
• Keywords: ニホンナシ / 休眠 / 発芽不良 / 生理活性物質

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、ニホンナシ発芽不良発生における概年リズムの有する役割の解明と、リズム同期による被害軽減策の検討を目的としている。本年度は、植物ホルモンのABAがリズム同期に有効であるとのわれわれの仮説を検証するため、ABAを発芽不良発生地域のニホンナシに処理し、自発休眠進行および開花制御に及ぼす影響を調査した。
発芽不良発生地域の補助加温ハウス園（A園およびB園）において、発芽不良発生履歴が同等なニホンナシ「幸水」を供試した。両園ともにABA処理および無処理（対照）の2処理区を設定し、各処理3樹を割り当て、11月6日に500ppmのABAを葉面散布した。同年11月6日（処理直前）から翌年3月1日にかけ、供試樹の充実した新梢から腋花芽および枝切片を採取した。また、12月中旬および1月中旬には腋花芽の耐凍性を調査した。また開花期には発芽不良発生状態を樹ごとに調査した。
花芽の耐凍性（半数致死温度）は、両園とも12月の調査ではABA処理により2.0℃程度向上した。A園では2月3日、B園では2月8日にハウスのビニル被覆を開始した。3月14日時点で、A園ではABA処理により開花率の上昇と不開花花芽率の減少が、B園では芽当たり小花数の増加および開花芽率の上昇が認められた。現在、処理樹から採取したサンプルについて遺伝子発現解析に着手したところである。
以上より、発芽不良発生地域ではニホンナシに対する秋季のABA処理は腋花芽耐凍性の向上、開花期の前進および芽当たり小花数の増加効果を示し、発芽不良症状を緩和できる可能性が示された。

Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初予定の実験を計画通りに実施し、我々の仮説について検証することができた。

Strategy for Future Research Activity

2020年度は、ABA散布処理樹から採取したサンプルから概日リズムの制御にかかる遺伝子、および休眠・開花に関する遺伝子の発現を調査し、ABAが開花および休眠制御に果たす役割を明らかにする。加えて、樹体内炭水化物含量および窒素含量を解析し、ABAによる開花期の前進および小花数の増加メカニズムを解析する。また、茨城県つくば市において、処理時期を変えてABAをニホンナシに処理し、開花に与える影響を解析する。

Causes of Carryover

試薬および圃場資材の一部について、当初予定より安価に購入できたこと、また年度末に出席を予定していた学会が開催中止となったことから、予算に使用残が生じた。予算残は、次年度の研究推進及びその公表を加速するために使用することとし、契約職員賃金の加算や学会発表等に充てる予定。