2020 Fiscal Year Research-status Report
Molecular mechanism of linalool mediated field resistance of citrus canker disease ( Xanthomonas citri subsp. citri)
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19K06041
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
島田 武彦 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門, 主席研究員 (10355399)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | GRAS-Di / かいよう病 / 遺伝子地図 |
Outline of Annual Research Achievements |
温暖化の進行により被害が深刻化するカンキツかいよう病の抵抗性品種の開発に向けて、ポンカン等にみられるカンキツかいよう病圃場抵抗性の原因物質であるリナロールが抵抗性品種で高含有化されるメカニズムを明らかにする。高含有化の鍵となる原因遺伝子の同定により圃場抵抗性を有するカンキツ新品種の開発に結びつく新規知見を獲得する。 本研究では、ポンカンの実生後代を用いてGRAS-ID法を用いて高密度遺伝子地図を作成し、関連遺伝子の遺伝子座、カンキツかいよう病抵抗性、リナロールの高含有化に関わるゲノム領域をマッピングし、その相関を明らかにする。また、リナロール高含有化に関わる遺伝子の同定するために、カンキツの公開ゲノム配列を基にリナロール含有量がマッピングされたゲノム領域中の予測遺伝子から、リナロールの生合成や代謝に関わる候補遺伝子を選抜する。 さらに、リナロールの含有量が高いポンカン、含有量の低い「はれひめ」、及びその実生後代の葉における関連遺伝子のRNA-SEQによるトランスクリプトーム解析を行い、高含有個体と低含有個体の間で有意に発現変動する遺伝子を選抜する。 この他、カンキツかいよう病原菌の接種後の増殖数とリナロール含有量の継時的変化の調査キンカン、ポンカン、ヒューガナツ等の抵抗性品種と罹病性品種について病原菌接種後16日間の菌の増殖数やリナロール含有量の継時的変化を調査する。菌の増殖パターンやリナロール含有量の変動から抵抗性の種類(静的抵抗性、動的抵抗性)を分類し、リナロールを高含有化する品 種が、静的抵抗性であることを明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「はれひめ」×ポンカンの実生集団(HP集団)の個体から、香気成分を抽出し、葉に含まれるリナロール含有量をGC-MS解析により定量した。昨年度作成したHP集団の遺伝子地図を用いて、カンキツかいよう病接種16日後のコロニー数とリナロール含有量についてQTL解析行った結果、「はれひめ」の第3染色体のSc0003-43919271のマーカーの近傍にリナロールの含有量を低下させるQTL座(LOD値3.2、寄与率15.1%)とかいよう病の罹病性のQTL座(LOD値2.9、寄与率13.7%)のピークが重なり、リナロール含有量がカンキツかいよう病圃場抵抗性に関与する新たな知見が得られた。クレメンティンのゲノム配列を参照した結果、検出されたQTL座には180種類の予測遺伝子が座上することがあきらかとなり、LRRタンパク質、プロテインカイネース、ストレス応答や糖・二次代謝成分の制御に係る転写因子、ジャスモン酸のシグナル伝達等に係る遺伝子が複数見られた。一方、リナロールの基質の生合成に係る1-デオキシ-D-キシルロース5-リン酸合成酵素(DXS)遺伝子、1−デオキシ−D−キシルロース−5−リン酸レダクトイソメラーゼ(DXR)やリナロール合成酵素遺伝子は、このQTL座にはみられなかった。本年度の結果から、リナロールの含有量が接種後のかいよう病の菌の生育数と強い負の相関があることが確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
検出したQTL座にある180遺伝子の中から、リナロールの含有量の制御に係る候補遺伝子を絞り込むため、リナロール含有量に差異がみられる両親のポンカン、「はれひめ」、および実生個体の葉からRNA-SEQ解析を実施し、発現差異がある遺伝子を抽出し、検出したQTL座との比較を行う。また、遺伝子地図の高密度化をするために、RAD-SEQ解析も実施する。この他、MEP経路の遺伝子やリナロール合成酵素遺伝子の発現量を圃場抵抗性、罹病性の品種間で調査する。 得られた知見を基に、ポンカン等にみられるリナロールを原因物質となするカンキツかいよう病の圃場抵抗性の分子生物学的特性を明らかにする。
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Causes of Carryover |
天候不良により樹の状態が悪く、解析に適した試験材料が入手できず、予定していたRNA-SEQ解析が実施できなかったため、研究費の残額が生じた。次年度は、試験材料の確保が見込まれるため、前年度できなかった解析を実施する予定である。
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