2019 Fiscal Year Research-status Report
植物ウイルス由来RNAサイレンシング抑制因子群の作用機構の解析
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19K06046
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
児玉 浩明 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 教授 (70302536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮原 平 千葉大学, 大学院園芸学研究科, 講師 (90720889)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RNAサイレンシング / RNAサイレンシング抑制因子 / RDR6 / タバコ / transient assay |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は植物ウイルスを認識し、RNAサイレンシングと呼ばれる仕組みによりウイルスのRNAを分解する短鎖RNA分子を産生する。一方、植物ウイルスはRNAサイレンシングから逃れるために、VSRと呼ばれるタンパク質を産生して対抗する。本研究では、Cucumber mosaic virus (CMV)のVSRである2bタンパク質に着目して、そのRNAサイレンシング抑制機構を調べた。CMVには強毒性のsubgroup Iと、弱毒性のsubgroup IIに分類される。従来、2bの作用としては、(1) 2本鎖の短鎖RNA分子に結合する、もしくは、(2)短鎖RNA分子と相補的なRNAを分解する酵素であるAGOタンパク質に結合する、(3)RDR6の関与する2本鎖RNA分子の形成ステップを阻害する、と報告されているが、申請者のこれまでの研究から、subgroup Iに分類されるCMV IA株の2bタンパク質(以下、IA2b)、およびCMV SD株の2bタンパク質(以下、SD2b)は主に(3)によるメカニズム、すなわちRDR6を標的としてRNAサイレンシングを抑制することを明らかにしている。この結果は、RDR6の作用が抑制されているタバコでは、人為的に2本鎖RNAを形成するRNAiコンストラクトによるRNAサイレンシングをIA2bおよびSD2bは抑制できないが、RDR6の作用が抑制されていないタバコでは、IA2bとSD2bはRNAサイレンシングを部分的に抑制したことによる。令和1年度の研究では、この先行研究の結果をもとに、弱毒性のsubgroup II に分類されるCMV Q株の2bタンパク質(以下、Q2b)の阻害作用について検討した。その結果、Q2bはRDR6の有無に関わらず、RNAサイレンシングを抑制できず、毒性の強さとRNAサイレンシングの抑制の度合いに相関があることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、1年間に、5-6種類のVSRについてRNAサイレンシングの抑制機構を調べることになっている。令和1年度では、実績の概要にあるように、強毒性、および弱毒性のCMV(4種)、それに加えてTomato Aspermy Virus (Tav) 2bタンパク質、計5種について評価している。したがってほぼ研究計画どおりの進捗である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでRDR6抑制タバコと野生型タバコにおけるVSRのRNAサイレンシングへの作用について比較、検討してきた。しかし、RDR6抑制そのものもRNAサイレンシングによるものであるため、結果の解釈が難しい場合も想定されていた。そこで、令和2年度ではゲノム編集によるRDR6欠損タバコを作出することにしたい。得られたRDR6欠損タバコと野生型タバコを用いて、VSRによるRNAサイレンシング抑制機構を明らかにする。なお、ゲノム編集タバコの作出とは平行して、従来の方法によるVSRの作用について検討を進める。令和2年度では、Tomato bushy stunt virus P19タンパク質、Potato virus X P25タンパク質のVSRのメカニズムについて明らかにする。
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