2020 Fiscal Year Research-status Report
ウイルス抵抗性遺伝子Nのエリシター応答性におけるイントロンの未知機能の解明
Project/Area Number |
19K06047
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
佐々木 信光 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (70431971)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 植物病理学 / 植物ウイルス / 植物抵抗性 / N遺伝子 / イントロン / エリシター / 細胞死 / 細胞間移行 |
Outline of Annual Research Achievements |
タバコの代表的なウイルス抵抗性遺伝子Nの遺伝子産物は,タバコモザイクウイルス因子(エリシター)を認識して過敏感反応と呼ばれる細胞死をともなう抵抗反応を誘導する.この反応が誘導される際には,N遺伝子の転写物量が著しく増加するという特徴があるが、その遺伝子発現メカニズムや生物学的・植物病理学的意義は十分に解明されていない.本研究では,エリシターに応答したN遺伝子発現および効率的な抵抗性誘導におけるイントロン配列に注目する.一過的遺伝子発現系および遺伝子組換え植物の実験系を組み合わせて,「イントロンの機能」という新しい観点からウイルス抵抗性誘導におけるエリシター応答性の分子メ カニムの解明を目指す.令和2年度では,(1)昨年度と同じく、N遺伝子プロモーターの下流にイントロン1、イントロン2あるいは両方を含むN配列を連結した発現プラスミドを用いてエリシター発現下における転写物量および細胞死誘導の違いを比較した.その結果,イントロン1と 2の両方があると,エリシター存在下で転写物が増加し,効率良く細胞死が誘導されることを再確認した.また,(2)これらの実験に用いたアグロバクテリウムを利用して、タバコあるいはニコチアナベンサミアーナの形質転換体の作出に着手した.さらに(3)昨年度の結果を踏まえて、35Sプロモーターの下流に連結したGFP遺伝子内にイントロン1とイントロン2両方のイントロンを挿入したコンストラクトに作製し、それらのGFP発現量を調べた.その結果,イントロン1あるいはイントロン2単独挿入と比較して、イントロン1と2の両方を挿入した場合にはGFP発現量が増大することが分かった.これらの結果から,N遺伝子のイントロン1や2は両方が協同的に作用することで遺伝子発現量を増大させることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は,コロナによって実験ができない時期があったり、植物が十分に管理ができない時期があったため、計画通りに実験を行うことができない部分があった。 課題1については、NP2.3-イントロン1とイントロン2のN遺伝子変異体を、エリシター発現下あるいは非発現下での転写物量を比較し、イントロン1と2の協同的な機能について再現性を得ることができた(実験1-2と実験1-4).HAエピトープタグで標識したNタンパク質のウエスタンブロット検出系を利用し,4つ全てのイントロンを含むN遺伝子(gN)とイントロンを含まないN遺伝子(cN)から合成されるタンパク質の定量を目指したが、植物の状態が悪く、安定した結果を得ることができなかった(実験1-3).35S-GFPにイン トロン1とイントロン2の両方を挿入したコンストラクトを作製し、それらのGFP発現量への影響を調べた(実験1-5).GFP転写物の定量解析ができなかったこと、実験回数が少なく再現性を確認する必要がある。 課題2については、N遺伝子を発現するニコチアナベンサミアーナとNP2.3-イントロン1とイントロン2のN遺伝子変異体を発現するタバコ(N遺伝子をもたない品種)の形質転換体作出に着手し、カルス化あるいは個体再生化まで進めることができたが、種子を回収するまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年の方針に引き続き、課題1については、NP2.3-イントロン変異体を用いて,エリシター存在下での転写物量と細胞死誘導への影響について再現性を確認し,実験回数を増やして定量的なデータを揃える(実験1-2と実験1- 4).HA抗体を利用したウエスタンブロット法によるNタンパク質の定量解析を行い,タンパク質量と転写物量あるいは抵抗性誘導効率に相関性があるのかどうか検証する (実験1-3).これまでに作製した35S-GFPコンストラクトの転写物量およびGFPタンパク質発現量への影響を調べる(実験1-5).また、NP2.3-イントロン変異体と35S-GFPコンストラクトの遺伝子発現量の違いが、転写活性化、転写物の安定化、翻訳調節のいずれに起因しているのか調べることにする。 課題2については、NP2.3配列の制 御下で様々な組み合わせのイントロン変異体を発現するタバコ(N遺伝子をもたない品種)およびニコチアナべンサミアナの形質転換体を作出し、エリシター応答性のN遺伝子発現量の違いを比較すると同時にそれらのウイルス抵抗性も調べる。
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