2019 Fiscal Year Research-status Report
Ecological study of plant pathogenic Pantoea spp.
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19K06050
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
瀧川 雄一 静岡大学, 農学部, 教授 (90163344)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | Pantoea ananatis / 病原性 / 頻度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究においては,イネやネギの重要植物病原であるPantoea ananatis細菌について,当研究室で得られた病原性決定遺伝子に関するこれまでの研究成果をもとに自然界での病原細菌の分布と頻度を調査し,生態と防除に関する知見を得ることを目的とした. 初年度は,大学近隣および大学フィールドセンターを含む静岡県内の各地よりPantoea ananatisを分離することを目標に,イネ,トウモロコシ,タマネギ,ニラ,ソルガム,エノコログサ,ススキの7種類の植物,アザミウマ,セイヨウミツバチの2種の昆虫,水田およびタマネギ畑の2箇所の土壌から選択培地などを用いて分離を行った.その結果,223点のサンプルを供試したうち60点よりP. ananatisと推定される細菌株を得ることができた.このうち,アザミウマとミツバチの昆虫試料および土壌試料からは全く分離することはできなかった.60点の資料から分離された菌株数は347株であった.このうち,イネやタマネギへの病原性を支配する遺伝子であるPASVIL領域を保持する菌株は210株であった.イネやトウモロコシからの分離株におけるPASVIL保有頻度は30から70%程度であり,場所や時期により多少の変動はあるものの定常的に存在していることがわかった.ネギ・タマネギからの分離では11月にわずかにPASVIL保有株が検出できたが,1,2月における試料からの分離はできなかった. これらのことから,P. ananatisの存在と病原性株との割合は植物種や環境によって変化することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は概ね順調に進んでいる.昆虫の種類と数についてはやや目標には到達していないものの,初年度としては十分な手がかりを得ることができたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目においても,多くの試料からの分離と病原性遺伝子の検出を継続する.特に昆虫試料の解析についてはなるべく点数を増やすように調査していきたい.初年度の成果には入れなかったが,過去の選択培地を用いた研究との整合性についても検討を開始しており,Pantoea ananatisの生態をより正確に調査できるものと考えている.また,タバコ過敏感反応様壊死の誘導能力やタマネギでの病原性の発現との一致率についても調査しているが,今の所不一致な例は見られていないが,もし不一致な例があれば本菌の新たな発病機構の解明への糸口になることから,この点についても今後さらに調査数を増やして調査を行う予定である.
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