2021 Fiscal Year Research-status Report
イネ白葉枯病菌の病原性関連遺伝子群hrpの感染過程に応じた発現制御機構の解明
Project/Area Number |
19K06058
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
津下 誠治 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (10254319)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 植物細菌病 / イネ白葉枯病菌 / 病原性 / 遺伝子発現制御 / cyclic-di-GMP |
Outline of Annual Research Achievements |
宿主防御機構の抑制に関わるタンパク質を宿主細胞に導入するtype III分泌装置の構成タンパク質をコードするhrp遺伝子群は、イネ白葉枯病菌の病原性に必須である。一方、感染過程や様々な環境シグナルに応じて細菌細胞内で合成・分解されるc-di-GMPは、グローバル転写制御因子Clpへの結合・解離により本因子をそれぞれ不活化・活性化することで各種遺伝子の発現や生理機能の変動を引き起こす。本研究は、イネ白葉枯病菌hrp遺伝子群の感染時特異的発現におけるc-di-GMP-Clpの関与とその制御機構の解明を目的としている。前年度までに、ClpはNtrC3とそれとは異なる未知因子を介した2つの経路によりhrp遺伝子群のマスターレギュレーターであるhrpGの発現を抑制することを明らかにしていたが、本年度はそれらに加えて以下の知見を得た。 ①NtrC3によるhrpG発現抑制機構を介在する機能未知の新規因子を同定した。 ②細菌増殖に応じたc-di-GMPの分解とClpの活性化は、本細菌の菌体外多糖の生産や病原力に重要であるが、本制御経路がhrpGの発現制御には関与しないことが示された。 ③本細菌のもつc-di-GMPの合成・分解に関わる27遺伝子のそれぞれを欠損させた変異株の中に顕著にhrpGの発現が増加するものは見られず、ClpによるhrpG発現抑制には複数のc-di-GMP濃度調節因子による重複した関与が考えられた。 ④c-di-GMP濃度調節因子の1つは、hrpGを介さずにhrp遺伝子群の発現抑制に関与するとともに、hrp遺伝子群の発現誘導因子の1つであるキシロースの代謝に関わることを見出した。 ⑤ClpはhrpGおよびhrp遺伝子群の発現を負に制御する一方で、HrpGによるhrp遺伝子群の発現誘導を介在するHrpXの発現に関しては正に制御することを見出し、Clpは様々な環境シグナルに応じて、hrp遺伝子群を多段階で制御していることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナ感染症の影響により、研究進展の若干の遅れはあったが、概ね順調に当初計画を遂行することができたと考えている。しかし、昨年度中に成果をまとめた論文を投稿・公表する予定であったが、未だそれにいたっていない。現在、その論文作成と、その完成に必要な追加データを得るために必要な実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の成果をまとめた論文を作成中である。そのために必要なデータはほぼ得られており、今後若干の追加データを得る予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の影響により、研究遂行に若干の遅れが生じたため、未だ本研究の成果を公表できていない。現在論文を執筆中であり、そのために必要なデータ収集に係る経費、および論文の英文校正と投稿料に本助成金を充てる予定である。 また、本研究成果を発表する予定であった国際学会が新型コロナ感染症の影響により、今年度に延期された。その渡航費用および学会参加費としても本助成金を充てたいと考えている。
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