2022 Fiscal Year Annual Research Report
イネ白葉枯病菌の病原性関連遺伝子群hrpの感染過程に応じた発現制御機構の解明
Project/Area Number |
19K06058
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
津下 誠治 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (10254319)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イネ白葉枯病菌 / hrp遺伝子群 / 遺伝子発現 / cyclic-di-GMP |
Outline of Annual Research Achievements |
イネの重要病原細菌である白葉枯病菌において種々の環境に応じて合成/分解されるセカンドメッセンジャー cyclic-di-GMP (c-di-GMP)によってその活性を制御される転写制御因子Clpは、細菌増殖に伴う菌体外多糖や菌体外分泌酵素の生産等、種々の病原力関連遺伝子の発現に関わることが知られている。一方、イネの防御応答の抑制に関わるタンパク質を直接イネ細胞内に導入する器官であるtype Ⅲ分泌装置 (T3SS)の構築に関わるhrp遺伝子群は本細菌の病原性に必須である。本研究では、Clpがhrp遺伝子群の発現制御にも関与しており、しかも同遺伝子群の発現制御カスケードの複数の部位において正/負の制御を行なっていることを明らかにした。このことは、本細菌のゲノム中に存在する27個のc-di-GMP合成・分解因子のそれぞれが、それぞれ異なる環境シグナルを受容して機能することでClpの活性化・不活化を介してhrp遺伝子群の発現を多段階かつ複数経路で制御していることを示している。 それらの経路の1つについては、hrp遺伝子群の制御遺伝子の1つであるhrpGの転写抑制機構の解明を行なうとともに、同経路が植物細胞壁分解酵素の生産も同時に抑制することを明らかにした。本結果は、この抑制経路が不活化されることにより、hrpGの発現抑制が解除され、T3SSの構築が誘導されるとともに、植物細胞壁を分解することで同装置の植物細胞への到達を容易にすることを示唆している。 さらに、Clpを介してもう1つのhrp制御遺伝子hrpXの発現抑制とともにキシロース代謝に関わるc-di-GMP合成/分解因子も同定しており、本研究により、複数の環境シグナルを受容してhrp遺伝子群をはじめとする菌体外多糖、菌体外分泌酵素といった複数の病原力因子の発現に関わる遺伝子発現制御ネットワークの一端を示すことができた。
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