2019 Fiscal Year Research-status Report
Functional analysis of a new AAA-ATPase gene in rice defense response
Project/Area Number |
19K06065
|
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
姜 昌杰 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 主席研究員 (80370659)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | サリチル酸 / いもち病 / AAA-ATPase / イネ / 防御応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) イネ幼苗(日本晴)に、植物ホルモンのオーキシン、ジベレリン、サイトカイニン、エチレン、アブシジン酸、ジャスモン酸およびサリチル酸を24時間水耕処理し、OsAAA-ATPase1 の発現をqPCR法により調べた。その結果、OsAAA-ATPase1 はサルチル酸に特異的に発現応答することが明らかになった。 (2) OsNPR1 およびWRKY45 を過剰発現した遺伝子組換えイネ系統ではOsAAA-ATPase1 発現の上昇が観察された。一方、OsNPR1 およびWRKY45 の発現をRNAi法により抑制したイネでは、サリチル酸による発現誘導が低下した。OsAAA-ATPase1 の過剰発現イネではOsNPR1 やWRKY45 の発現変化は見られなかった。これらの結果から、OsAAA-ATPase1 はサリチル酸シグナル伝達経路において、OsNPR1 およびWRKY45 の制御下にあることが明らかになった。 (3) His(6)-OsAAA-ATPase1組換え融合タンパク質を大腸菌で合成し、Niカラムにより精製した。得られた融合タンパク質はATPaseの酵素活性を示した。 (4) OsAAA-ATPase1-GFP組換え融合タンパク質をコードするプラスミドDNAを作製し、イネプロトプラストにPEG法により導入した。24時間培養後に、共焦点レーザー蛍光顕微鏡を用いた細胞内局の在観察により、OsAAA-ATPase1は細胞質および核内に局在していることを明らかにした。このような細胞内分布様式はこれまで報告されているイネOsLRD6-6/LMRやシロイヌナズナAtOM66とは異なっており、植物防御応答における機能の分化が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の計画通り進捗しており、課題を推進する上で特に問題はない。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1) OsAAA-ATPase1 はOsSSI2遺伝子の突然変異または発現抑制により誘導される。また、OsSSI2の発現を抑制した遺伝子組換えイネではいもち病に加え、白葉枯病に対しても強い抵抗性を示した。そこで、OsAAA-ATPase1 の過剰発現イネを用いて白葉枯病に対する抵抗性を調べ、OsAAA-ATPase1 はイネ複合病害抵抗性に寄与しているかを明らかにする。 (2) OsAAA-ATPase1-GFPを発現する遺伝子組換えイネを用い、いもち病菌感染時におけるOsAAA-ATPase1タンパク質のATPase活性の変動を測定し、イネ病害応答におけるOsAAA-ATPase1の作用機構を解析する。 (3) AAA-ATPaseファミリータンパク質の転写制御への関与が報告されている。そこで、OsAAA-ATPase1 を過剰発現または発現抑制した遺伝子組換えイネを用い、いもち病菌感染時におけるトランスクリプトーム変動をRNA-seq法により解析し、OsAAA-ATPase1による抵抗性活性化に関わる遺伝子転写制御ネットワークを明らかにする。 (4) 上記トランスクリプトーム解析結果から、転写制御因子を中心に候補主導遺伝子を選抜し、遺伝子組換え技術により過剰発現や発現抑制(RNAi)、ゲノム編集変異系統を作製し、イネ病害応答における機能を解析する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:(1)本年度では、実験データの解析や論文作成等の作業が比較的多く、新規実験材料の作製や管理等の作業が相対的に少なかったので、予定していた実験補助員の雇用を見送った。(2)参加を予定していた植物病理学会大会が新型コロナウィルス感染症の影響で中止となった。 次年度使用計画:(1)次年度に実施予定のトランスクリプトーム解析について、いもち病接種後の経時的サンプルの追加等、より詳細な解析のために使用する。(2)植物病理学会や分子生物学会に参加し、本課題研究に関連する最新情報の収集や研究成果の発表を行う。
|
Research Products
(3 results)