2022 Fiscal Year Annual Research Report
社会性アブラムシの建築生物学―植物ゴール内ホメオスタシスと社会制御ー
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19K06068
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
柴尾 晴信 慶應義塾大学, 自然科学研究教育センター(日吉), 訪問研究員 (90401207)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 茂 筑波大学, 生命環境系, 講師 (30239131)
沓掛 磨也子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究グループ付 (90415703)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会性アブラムシ / 植物ゴール / ホメオスタシス / 階級分化 / 季節多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会性種のハクウンボクアブラムシが誘導する植物ゴールは、複雑なサンゴ状の巣に成長し、ゴール上部に開口部がなく、酸素が行き届きにくい構造をしている。本年度は、複雑な巣構造をもつゴール内でアブラムシが酸素の供給を得るメカニズムの解明に取り組んだ。本種のゴールは、生きた植物の組織からできているため、光合成を通じてアブラムシに酸素を供給している可能性がある。この仮説を検証するために、野外で6-9月に本種のゴールおよび宿主植物の葉をサンプリングし、それぞれについて複数の部位で可視光(340-780nm)の吸収スペクトル、葉緑素量(SPAD値)、クロロフィル蛍光計測による光合成能(Qy値)を定量評価した。さらに、ゴールと葉をそれぞれ密閉容器に入れて、光強度3段階(暗黒、弱光、強光)でガス濃度計によりCO2吸収量とO2発生量を測定した(温度25-30℃、湿度75-85%)。暗黒条件で呼吸速度を求め、光条件における実際のCO2吸収速度とO2発生速度はみかけの速度に呼吸速度を足して求めた。その結果、本種のゴールは、葉には劣るものの葉緑素があり、光合成機能を有していることが確認できた(仮説を支持)。実際にゴールは光合成により二酸化炭素を吸収し、酸素を発生させていることや、ゴール上半部は下半部よりも高い光合成能力を備えており、酸素供給能力が優れていることなどが明らかになった。本種のゴールは、巣内での呼吸により生じた二酸化炭素を利用して光合成を行ない、アブラムシに酸素を提供するなど、光合成や呼吸に伴うガス交換の役割を果たしている可能性が考えられる。
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Research Products
(2 results)