2020 Fiscal Year Research-status Report
Research of a time series functional analysis and an induction factor of parthenogenesis inducing Wolbachia to host parasitoids
Project/Area Number |
19K06069
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
田上 陽介 静岡大学, 農学部, 准教授 (60426476)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 貴史 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 契約研究員 (20726707)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 寄生蜂 / 性決定(遺伝子) / 産雌制単為生殖化 / ボルバキア / ライブイメージング / dsx |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ハチ目の寄生蜂と、その細胞内に共生し宿主寄生蜂を雌だけ産まれるようにする細菌(PI共生細菌)との相互作用を明らかにし、結果として得られるPIのメカニズムの解明にある。本研究ではこれまで解析困難であった細胞内小器官と細胞内共生細菌の挙動を微小な寄生蜂の卵を観察し、PIに働く時期と器官を明らかにする。さらに、大規模遺伝子発現解析を通じPIの誘導に関わる遺伝子の探索を行うことである。これらの研究により、生物における性の仕組みのブラックボックスを共生細菌という新しい観点から明らかにすることのできる挑戦的な試みであり、性の進化を明らかにするうえでも貴重なデータが得られる。 本年度までの研究計画は、①ライブイメージングによる胚発生とPIおよび共生細菌の関わりの探索、②ゲノム機能解析、遺伝子発現解析による寄生蜂生殖操作関連遺伝子のスクリーニング、③遺伝子機能に関わる共生細菌の解析、であった。 詳しく記入すると、本年度の研究では、3つの成果を明らかにすることができた。①寄生蜂の種類を増加させ細胞内小器官および共生細菌について、初期発生過程についてライブイメージング観察を行った。その結果、どの種においてもライブイメージングが可能であ個々の器官や共生細菌を継時観察することができた。②オンシツツヤコバチで新たに次世代シーケンス解析を行い、3種寄生蜂のドラフトゲノムを得ることができ、多くの種で見つかっている性決定カスケードにかかわる遺伝子を抽出することができた。特に重要なdsxについては、全ゲノム配列が得られつつある。現在のところいくつか候補は上げることができた。③2種ボルバキアで多くのボルバキアゲノムが得られ、リケッチアについても多くのゲノムが得られた。生殖操作に関わっている可能性のあるボルバキアのファージゲノムについても断片を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
タマゴコバチの利用が簡単に行うことができなくなっていた時期があり、新しく入手した別の寄生蜂は、タマゴコバチと同様に細胞内共生細菌によりPIするものの、その生態的特性の違いから胚発生の観察には不適であった。しかし、産卵時期の確認方法の工夫、継続的な行動観察等を進めていくことでいくつかの難関を克服し、現在ではライブイメージングを行い、タマゴコバチと同様の観察を始めている。時系列解析についても他の寄生蜂も含め進み始めている。 ハモグリミドリヒメコバチの大量増殖は容易であったため、今年はじめにはサンプルがそろい次世代シーケンス、解析まで行うことができた。また、オンシツツヤコバチについても増殖が容易であったため、次世代シーケンス、および解析も行うことができた。このオンシツツヤコバチもタマゴコバチと同様にボルバキアに感染し雌化しているため、ボルバキアのゲノム解析も進めることができた。また、現在は改めてタマゴコバチの大量飼育を再開することができ、順調に飼育・大量増殖が行えている。FISH法に若干の遅れは出ているものの他の研究材料で試すなど今後への準備は進んでおり、全体としてはおおむね順調に進んでいる。来年度行う予定のRNAiについても必要なマイクロインジェクション設備を整備し、寄生蜂よりサイズが大きめの昆虫で試みることで、容易に行うことが可能な状況となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究では寄生蜂の飼育が一番重要なカギとなるが、現在は順調に行うことができている。今後遺伝子解析可能は行うことが可能な様々な種類の冷凍保存した個体も十分あり、バイサルファイトシーケンス、発生時期特異的RNA-seqの準備を進めている。解析を行うことでメチル化部位を明らかにできるとともに性決定遺伝子の機能解析を行う。また、RACEによる性決定に一番重要な遺伝子dsxの全塩基配列の決定を進めている。dsxの全長が明らかになれば、発現解析により雌雄でのスプライシングパターンの違いを明らかにすることでそれらの発現時期など性決定に重要な要素を見つけることができる。性決定カスケードの上位にある性決定に関わる遺伝子も明らかにしているため機能解析を行う。 イメージングに関しては今年度有糸分裂に関わっていることが予想されている宿主側の遺伝子、ボルバキア(ファージも含む)側の遺伝子がいくつか見つかっているため、これらの遺伝子をもとに時期特異的に染色(FISH)を推し進める。 ゲノムノックアウト手法であるRNAiには、効果がある種とない種がある。本研究で用いる種については前例がないためわからない。しかし、本研究ではいくつかの異なる属の種を用いているため、次年度は特にRNAiを用いた機能解析を最終目標に据えている。以上の研究をまとめ、何が生殖操作に重要で、共生細菌がどのような働きを担うか明らかにすることで、寄生蜂の生殖操作・性決定のメカニズムを明らかにする。
|
Causes of Carryover |
今年度はコロナ禍の中での研究であったため、十分な研究費(特に外部委託解析)を使用することができいなかった。その分を次年度に繰り越し、現在繰越額を使用して委託研究を進める。
|
Research Products
(1 results)