2020 Fiscal Year Research-status Report
キイロショウジョウバエ を用いた精子貯蔵器官数を決定する分子機構の解明
Project/Area Number |
19K06071
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
加藤 容子 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 准教授 (10534373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 雅信 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (60221082)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 妊性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫の雌は雄から受け取った精子を受精時まで貯蔵する内部生殖器官を持つ。キイロショウジョウバエにおいては、異なる二つの精子貯蔵器官があり、短期的な精子貯蔵には環状受精嚢が、一方、長期的な貯蔵には左右一対の受精嚢が関与する。受精嚢の形成不全は不妊となることから、受精嚢は貯精機能のみならず、貯蔵精子の品質管理などにも重要であることが示唆されているが、受精嚢数の決定機構や受精嚢数と妊性の関連は不明な点が多い。本研究では、受精嚢数を決定する分子基盤の解明と、受精嚢数と妊性の関連を明らかにすることを目的とする。RNAiによる遺伝学的探索により、受精嚢数の決定に関与する遺伝子として平面内細胞極性に関わるDachsousと複数のWinglessシグナル経路関連遺伝子を同定した。 平面内細胞極性に関わるFat/Ds経路のDsの遺伝子ノックダウンは受精嚢数の増加を引き起こす。受精嚢の増加にもかかわらず雌の妊性が著しく低下し、軽度の外部生殖器の形成異常が観察された。受精嚢の機能不全によるものか、外部生殖器のクチクラ異常により交尾が成立しないのか、ノックダウン系統の雌と野生型の雄を用いて交配実験を行った。4時間での交尾成立率を調べたところ、野生型ペアでは4割の成功率であったが、dsノックダウン雌と野生型雄のペアでは成立しなかった。このことから雌の妊性が著しく低下した理由として、外部生殖器の形成不全によるものであることがわかった。Wgシグナル経路関連遺伝子であるwgとdsh及びpan遺伝子のノックダウンは受精嚢が1つに減少することから、古典的Wgシグナル経路が受精嚢数の決定に重要であると考えられるが、受容体が不明である。そこで遺伝学的探索を行ったが、fz遺伝子群のノックダウンは受精嚢数に影響を与えなかったことから、受精嚢数の決定に関わる受容体の同定には至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
免疫染色により、細胞生物学的に形態形成等に関して解析を行っている最中である。いくつかの抗体に関しては条件検討が終わっており、解析を行っていくのみの状況となっている。また、受精嚢数決定に関わる因子の遺伝学的スクリーニングを計画していたが、感染症の影響で国際便の大幅な遅延があり、ショウジョウバエ系統の入手までに非常に時間がかかる状態であった。そのため、当初予定していた系統数を減少せざるをえなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
生殖原器が小さく、RNA-seq解析を行うために必要なサンプル量を集めるのが難しいことから、生殖原器特異的に遺伝子のノックダウンを行い、個体全体のRNAを用いてRNA-seqを行い、コントロールと遺伝子発現プロファイルを比較することで、受精嚢数の決定に関わる遺伝子を同定する。 また、通常の免疫染色法では、組織を体外に取り出し、解析を行う。しかしながら、受精嚢の発生は空間的な位置情報も重要であるため、空間的な組織発生を調べるために、透明化技術を用いて空間的な組織発生を解析することで、より詳細な組織発生を明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初予定していたRNA-seqの外部委託を計画しており、予算を計上していたが、先に他の実験を優先したため、予定していたRNA-seq解析の外部委託を行わなかったため次年時に使用額が生じた。
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