2019 Fiscal Year Research-status Report
How have poisonous arthropods evolved tolerance for predator digestive systems?
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19K06073
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
杉浦 真治 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70399377)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 一夫 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (30332448)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 被食防衛 / 化学防衛 / 物理防衛 / 逃避行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
野外でカエル類がどのような節足動物に強い捕食圧を与えているかを明らかにするために、2019年5月から10月にかけて月1回、ヒキガエル類(ニホンヒキガエル、ナガレヒキガエル)をサンプリングし、室内で糞をさせて餌動物の調査を行った。結果、97.9%の個体の糞から無脊椎動物(昆虫、サワガニ、陸貝)の未消化物が発見された。餌として、ハサミで物理な防御を行うサワガニが最も頻繁に利用されており、他にアリやゴミムシ類など防御物質をもつ昆虫類も多く含まれていた。以上のように、ヒキガエル類は物理・化学防御手段をもつ様々な節足動物を捕食していた。 強い防御物質をもつミイデラゴミムシ成虫のカエル体内での生存プロセスを明らかにするために、ミイデラゴミムシ成虫(有毒種)とチャイロコメノゴミムシダマシ成虫(無毒種)をニホンヒキガエルの胃内に設置し、20分から90分後に取り出し生存率を測定した。結果、ミイデラゴミムシでは20分後の生存率が82%から90分後の45%に、チャイロコメノゴミムシダマシでは20分後の55%から90分後の11%というように時間が経つごとに生存率は低下した。有毒なミイデラゴミムシの方が無毒なチャイロコメノゴミムシダマシよりもカエル体内での生存率は高い傾向にあったが、無毒なチャイロコメノゴミムシダマシも一定数生存していた。 さらに、カエル類7種と甲虫類36種を野外から採集し、室内で甲虫類の対カエル防衛方法を網羅的に調査した。結果、一部の甲虫種でカエル類に捕食された後も体外に生きて脱出するという驚くべき行動を発見した。これらの種には防御物質をもたない種も含まれており、これまで知られていない行動である。その脱出メカニズムについてさらなる実験が必要とされる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたカエル体内におけるミイデラゴミムシの生存プロセスを定量的に調査することができた。加えて、複数のカエル種に対する防衛行動を36種の甲虫で調査し、当初予想していなかった対カエル防衛戦略を発見した。この防衛行動は、これまでどの昆虫類でも見られないものであり、その確証を得るためにさらなる実験が必要とされる。
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Strategy for Future Research Activity |
カエル類の野外での餌動物の同定を進め、データを解析し、論文をとりまとめる。また、カエル体内での有毒節足動物の生存プロセスについてもサンプルサイズを増やしデータ解析を行う。さらに、本年度は36種におよぶ甲虫類における対カエル防衛行動の調査から、数時間後にカエル体内から脱出するという逃避行動を発見した。無毒な甲虫類でのこのような行動は従来知られておらず、捕食者体外への脱出メカニズムを明らかにする実験を今後行う。また、引き続き、さまざまな節足動物における対カエル防衛行動を調査し、どのような防衛戦略が一般的であるかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度中での英語論文の投稿が間に合わなかったため。次年度に英文校閲費として使用予定である。
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