2020 Fiscal Year Research-status Report
How have poisonous arthropods evolved tolerance for predator digestive systems?
Project/Area Number |
19K06073
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
杉浦 真治 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70399377)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 一夫 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主幹研究員 (30332448)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 被食防衛 / 捕食―被食関係 / 水生甲虫 / カエル |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、カエル類に対する節足動物の防衛行動を室内条件下で調査した。これまで実験に使用してきた在来カエル類(トノサマガエル、トウキョウダルマガエル、ツチガエル、ヌマガエル、ニホンアマガエル)に加え、特定外来生物であるウシガエルを環境省の許可を経て捕獲・飼育し、ウシガエルに対する防衛行動も観察した。結果、一部の甲虫種で在来のカエル類からだけでなく、ウシガエルからも高頻度で捕食を回避する行動を発見した。 昨年度発見したマメガムシの対カエル防衛行動の結果を論文にまとめて投稿し、Current Biology誌に掲載された。マメガムシはカエル5種(トノサマガエル、トウキョウダルマガエル、ツチガエル、ヌマガエル、ニホンアマガエル)に飲み込まれても、消化管を通過し6分から6時間後に総排出腔から生きて脱出した。カエル類は餌を摂食後、通常未消化物は食後24時間よりも後に糞として排出された。つまり、マメガムシは生きて脱出に成功する場合、死んで糞として排出されるよりも速かった。マメガムシはカルの総排出口から自力で脱出しているかもしれないが、カエルの腸を刺激して排便を促進することで脱出している可能性が高い。このような動物の行動はこれまで知られていなかった。本成果をプレスリリースした結果、国内外の100以上のメディア(New York Times、CNN、毎日新聞、朝日新聞等)に多数報道された。 カエル類などの両生類だけでなく、爬虫類、哺乳類、無脊椎動物に対する昆虫類の被食防衛行動についてのこれまでの知見を総説論文としてまとめ、Entomological Science誌に掲載された。捕食者の分類群ごとに被食防衛パターンを整理し、昆虫類における被食防衛行動の進化を駆動する捕食者について検討した。また、マメガムシのように、捕食者体内での耐性機構の進化についても論じた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カエル類に捕食されても短時間で総排出腔から生きて脱出するという驚くべき昆虫の行動を発見した。これは本研究計画からは予想されなかった発見であった。論文を国際誌で発表すると、国内外から大きな反響があった。また、カエル類だけでなく様々な分類群にわたる捕食者に対する昆虫類の防衛行動を総説論文としてまとめ、専門誌に発表することができた。さらに、外来ウシガエルの捕食からも回避できる甲虫を複数種発見することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
マメガムシがカエル体内からいかに脱出するのか、より詳細な実験・観察を行い明らかにしていく。2年間の調査で、比較的小型のカエルから脱出成功率が高い傾向が観察された。しかし、統計解析を行うには、カエル各種のサンプルサイズが小さい。カエル各種の実験個体数を増やし、カエルのサイズとマメガムシの脱出成功率の関係を定量的に明らかにしていく必要がある。また、カエル体内でマメガムシがどのように移動し、総排出口から脱出することができるのか、生体内での観察方法を模索する。 侵略的外来種であるウシガエルを捕食者モデルとして、ウシガエルお同所的に生息しうる様々な節足動物の防衛行動を室内で観察する。ウシガエルの侵入によって、多様な水生・半水生動物が減少していると考えられているが、その中でもどのような種が影響を受けやすいのか、対カエル防衛行動から査定する。 この2年間で、多種多様なカエルから高頻度で捕食回避に成功する甲虫を複数種発見している。これらの種の捕食回避メカニズムを操作実験によって明らかにし、論文としてとりまとめて学術誌に投稿する。 この2年間で調査してきたカエル類の野外での餌動物データを論文としてとりまとめ学術誌に投稿する。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍で出張に制限があり、十分な野外調査を行うことができなかった。また、年度中に英語論文の投稿が間に合わなかった。次年度に国内出張および英文校閲費等として使用予定である。
|
Remarks |
研究成果について研究機関(神戸大学)を通じてプレスリリースを行った。また、研究結果の一部を動画に編集し、YouTubeで公開した。
|
Research Products
(4 results)