2019 Fiscal Year Research-status Report
The change in oviposition preference of phytophagous insect by plant drought stress
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19K06074
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
大村 尚 広島大学, 統合生命科学研究科(生), 准教授 (60335635)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 毅 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (30730626)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 植食性昆虫 / 寄主選択 / オスモライト / チョウ / 産卵 / 水ストレス / 青酸配糖体 / 防御物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)4月下旬~6月下旬にかけて野外のネムノキより週一で新鮮葉を採取し、葉に含まれるオスモライト(ピニトール)を定量した。所定量の新鮮葉をメタノールで抽出したのち、サンプルをTMS誘導体化したのちGC-MSで分析し、葉新鮮重あたりのピニトール濃度を計算した。ネムノキ新葉が展葉したての4月下旬ではピニトール濃度0.14%だったものが、樹勢が増す6月下旬には0.67%まで増加することがわかった。 2)ポット植えのネムノキ実生健全株と水ストレス株を網室に一つずつ配置し、キタキチョウ雌一頭を2時間放して自由に産卵させたときの二つの株に対する選好性をしらべた。試験は12反復おこない、4反復において雌チョウの産卵が見られた。しかし、どちらかの株への有意な産卵選好性は認められなかった。 3)室内飼育した羽化後2~4日齢キタキチョウの未交尾雄50頭、未交尾雌40頭それぞれを部位毎にわけ、味覚受容体関連遺伝子解析のサンプルを調製した。現在、-80℃にて凍結保存中である。 4)キタキチョウが産卵しないマメ科植物シロツメクサより、本植物に特徴的な成分である青酸配糖体リナマリンが産卵阻害物質として作用することをみいだした。くわえて、本種の産卵刺激物質ピニトールも産卵に必要な閾値濃度以上存在する事もわかった。 5)キタキチョウの非寄主植物であるカタバミ科植物カタバミの水溶性酸性画分に本種に対する産卵刺激活性があることをみいだした。この画分について化学分析をおこない、シュウ酸、複数のヒドロキシカルボン酸および同ガンマラクトンを主要成分として同定した。このうち、ヒドロキシカルボン酸および同ガンマラクトンは本種の寄主植物であるネムノキの水溶性酸性画分にも含まれており、その画分は中性画分に含まれるピニトールと協力的な産卵刺激活性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)産卵を制御する植物化学成分の探索は計画通り進捗している。シロツメクサに含まれる産卵阻害物質に関する知見は、査読付学術論文として報告した。非寄主植物のカタバミと寄主植物のネムノキの産卵活性画分から共通の候補物質をみつけることができた。 2)寄主植物における産卵刺激物質オスモライトの量的変動の測定は、計画の半分しか進捗しなかった。当初、HPLCを用いて二種類のオスモライト(ピニトール、グリシンベタイン)を定量する計画であったが、再現性・検出感度に問題があったため、条件検討をくりかえした。最終的に、TMS-GC-MS法を用いることでピニトールの定量を安定して行えるようになった。グリシンベタインは植物体での含有量がすくなく検出には大量の抽出サンプルが必要になるため、次年度以降、対象をピニトールに絞って植物体での変動を長期的に調べる予定である。 3)植物の水ストレスによる産卵選好性の変化をしらべる生物試験は進捗が遅れている。この原因として、種子から栽培したネムノキ実生の成長が遅いうえ、水ストレスの条件検討に時間がかかり生物試験の開始が9月下旬に遅れたことが挙げられる。この時期はすでに短日条件でチョウの産卵活性が低下していた可能性があり、試験した雌の1/3しか産卵反応を示さなかった。今年度は、実施時期を早めて再試験をおこなう。 4)植物化学成分に対する味覚感覚器の応答特性について、現在、予備検討を行っている。雌雄の前脚ふ節にある感覚子の形態・配置などを光学および電子顕微鏡で調べている。この感覚子のサイズにあわせてマイクロキャピラリーを試作し、チップレコーディング法による電気生理学的試験が可能かどうか検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)寄主植物の野外株(ネムノキ、メドハギ)におけるオスモライト(ピニトール)の季節変動を9月末まで長期的に行う。キタキチョウのピニトールに対する濃度-産卵応答曲線から、寄主植物として産卵可能なフェノロジーを把握する。また、ポット植えのネムノキ実生をもちいて、水ストレスにともなうオスモライト(ピニトール)の濃度変化を調べる。また、健全株とストレス株をもちいて母チョウの産卵選好性をしらべ、水ストレスが寄主選択におよぼす影響を精査する。 2)カタバミおよびネムノキ新鮮葉抽出物の水溶性酸性画分から同定された成分の標品をもちいて、キタキチョウの産卵反応試験をおこなう。一部の成分については、主要な産卵活性成分であるピニトール標品との混合試験もおこない、副成分による協力作用の有無をあわせて検証する。 3)本種の寄主植物であるマメ科植物メドハギの新鮮葉抽出物から、水溶性酸性画分および同塩基性画分を調製し、産卵刺激物質の探索をおこなう。これらの画分は単独での活性はないが、ピニトールとの混合により協力作用を示すことがすでにわかっている。 4)サンプリングした雌雄虫体の各部位について味覚受容体関連遺伝子の解析をおこない、ピニトール受容にかかわる事が予想されるイノシトール受容体およびベタイン受容体のホモログ探索をおこなう。 5)雌チョウ前脚でのオスモライトの味覚感受性をしらべるため、チップレコーディング法による電気生理学的試験の条件検討を引き続きおこなう。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、研究分担者(藤井)が実験経費(物品費)として計上した予算である。研究分担者は、この予算を使用して生物試料のRNAシーケンスを行う計画であったが、研究代表者(大村)による生物試料の準備が遅れたこと、研究分担者に所属研究機関の変更(東京大学→摂南大学)があったこと、により計画通りの予算執行ができなかった。 分析をおこなう生物試料はすでに準備できていることから、研究分担者が令和2年度に繰り越す予算を全額使用して、RNAシーケンスを実施する予定である。
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Research Products
(3 results)