2019 Fiscal Year Research-status Report
真皮細胞における尿酸合成能の発見と生理・遺伝学的解析
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19K06075
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 告 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50507887)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RNA-seq / CRISPR/Cas9 / ゲノム編集 / 尿酸 / XDH / XO / 抗酸化酵素 / 遺伝子ファミリー |
Outline of Annual Research Achievements |
無卵油変異体(oel)は、幼虫期には真皮細胞で尿酸を合成できず、成虫期には不妊化する。ウシ由来のキサンチンオキシダ―ゼ(XO)を幼虫体内へ注射すると皮膚が不透明化することから、oel個体ではカイコの尿酸合成の鍵酵素であるキサンチンデヒドロゲナーゼ(XDH)の活性に異常があることが推定されている。既にoel座はポジショナルクローニングによりZ染色体の全長の1/110の長さに相当する222 kbの領域に絞り込まれている。さらに、脂肪体におけるRNA-seq解析により、候補領域内に存在する遺伝子の一つにおいて、oel個体ではフレームシフトを生じさせる1塩基欠失が存在することが判明している。当該遺伝子はファミリーを形成しており、幅広い生物において抗酸化機能を有することが知られているが、XDHやXOの活性制御との関連は不明である。 本年度は、候補遺伝子の機能を明らかにするために、CRISPR/Cas9によるゲノム編集を行った。候補遺伝子の他に(遺伝子Aとする)、遺伝子Aとともにファミリーを形成し、抗酸化機能を有する遺伝子Bもターゲットとした。遺伝子Bのノックアウト個体では発育の遅延が認められたものの、幼虫皮膚は正常であった。一方、遺伝子Aのノックアウト個体では幼虫皮膚が透明化し、oel同様の形質異常を示した。この結果から、遺伝子Aがoel座の原因遺伝子であることが示唆された。遺伝子AとBは同じファミリーに属するが、その機能は分化していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
3年の研究期間内でoel座の原因遺伝子を特定することが計画の一つであったが、候補遺伝子が同定され、その機能をCRISPR/Cas9によるゲノム編集により証明できたので、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
抗酸化機能を有する遺伝子Aが、XDH活性をどのようなメカニズムで制御しているのか解析する。そのためには、XDH活性とカイコ幼虫の発育ステージとの関係など、基礎的な知見を得る必要がある。XDH活性の調査方法として、分光光度計を使う手法や、活性染色に基づく手法を整備済なので、2020年度に生化学的な実験に着手する。
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Causes of Carryover |
oel座の候補遺伝子が早期に見いだされ、ゲノム編集実験によりその機能を証明できたので経費を削減できた。2020年度にはカイコにおけるXDH活性とoel遺伝子との関係に着目した研究を行う。これまでの形質遺伝学、分子遺伝学中心の実験とは異なり、生化学的な実験手法が必要となるため、実験装置、器具、試薬の購入のために予算を有効利用する。
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