2020 Fiscal Year Research-status Report
真皮細胞における尿酸合成能の発見と生理・遺伝学的解析
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19K06075
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤井 告 九州大学, 農学研究院, 准教授 (50507887)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 抗酸化酵素 / ペルオキシレドキシン / XDH / モリブデン補酵素 / アルデヒド酸化酵素 / RNA-seq / CRISPR/Cas9 / 尿酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までに行ったRNA-seq解析および、ゲノム編集実験により、抗酸化酵素の一種であるペルオキシレドキシンをコードするBmPrx6が無卵油変異体(oel)の原因遺伝子であることが明らかになった。本年度は、当該遺伝子がBmXDH1活性を制御するメカニズムの解明を試みた。 BmXDH1が活性を有するにはモリブデン補酵素(MoCo)が必要なので、oel座はMoCoの合成や安定性に関与している可能性が考えられる。その点を検証するために、BmXDH1同様にMoCoに依存しているアルデヒド酸化酵素(AO)に着目した。鱗翅目昆虫では、雄の触角で発現するAOの存在が知られていたが、無卵油はZ染色体に連鎖し、雌個体が次世代を残せないため、無卵油の雄個体を得ることができない。一方、2019年に、虫こぶ昆虫においてオーキシンの合成酵素として同定されたAOのカイコホモログが、絹糸腺において高発現していることが報告された。そこで、無卵油幼虫の絹糸腺から抽出したタンパク質のNative-PAGEを行い、ベンズアルデヒドを基質とした活性染色法によりAO活性を調査した。その結果、正常個体では確認された絹糸腺でのAO活性が、無卵油変異体では認められなかった。同様に脂肪体由来のタンパク質においては、正常個体で確認されたBmXDH1活性が、無卵油変異体では確認されなかった。 以上の結果より、無卵油変異体ではMoCoに何らかの異常が生じている結果、MoCo依存性のBmXDH1やAOの活性が失われていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、無卵油変異体(oel)の原因遺伝子を特定しており、本年度は、その機能の解明に着手できた。さらに、原因遺伝子がMoCoの合成や安定性に関与していることを見出すことができたため、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、BmPrx1とBmPrx6のノックアウト系統を活用しながら、ペルオキシレドキシンがMoCoの合成や安定性を支配するメカニズムの解明を試みる。さらに、これまでの研究成果を投稿論文として発表する。
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Causes of Carryover |
参加予定であった学会が二年連続でオンライン開催となり、旅費の支出が不要となったため、旅費として計上していた経費は、試薬や塩基配列情報を保存・解析するためのパソコン周辺機器の購入のために使用予定である。RNA-seq解析やゲノム編集実験が初年度で終了したため、そのために計上した経費を、酵素活性の調査等の実験に必要な試薬や装置の購入に充てる。
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