2019 Fiscal Year Research-status Report
キイロショウジョウバエにおける腸内細菌-脳-腸相関の分子メカニズムの解明
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19K06081
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安佛 尚志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30392583)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / ショウジョウバエ / 腸内細菌-脳-腸相関 / 全ゲノム増幅 / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ショウジョウバエとその腸内細菌叢を研究対象として、腸内細菌-脳-腸相関に関与する細菌および宿主双方の因子を明らかにすることを目的としている。申請書において、初年度はショウジョウバエの配偶者選択と餌選択を指標としたアッセイ系を立ち上げることを計画していたが、それに先立ち、研究の遂行上必要となる解析技術の検討と習得に取り組んだ。 腸内細菌叢の解析には、次世代シーケンサーによる16Sアンプリコン解析を行うのが一般的である。本研究の対象であるショウジョウバエは極めて小さく、従来は20-40頭を解剖して取り出した腸をまとめて1サンプルとするため、十分なサンプル数を得るためには相応の時間と労力が必要となる。そこで、ショウジョウバエ1個体の腸に由来するDNAからの解析を試みた。具体的には、解剖によって取り出した腸をPBS中で破砕し、フィルターで宿主細胞を除去したのちに全DNAを抽出し、REPLI-g Single Cell Kit(QIAGEN)を用いて全ゲノム増幅を行なった。このサンプルを用いてMiSeq(illumina)による16S rRNAアンプリコンシーケンシングを行い、OTUクラスタリングとアノテーションを行なった。結果として、1個体由来のDNAからもシーケンス可能な量の増幅DNAが得られ、腸内細菌叢の解析結果も従来法で得られたものと大きな違いはなかった。これにより、本研究課題の遂行において、腸内細菌叢の解析をより効率的に行うことが可能となった。 また、ショウジョウバエの共生細菌であるスピロプラズマやボルバキアのゲノム解析も行なった。実験や情報解析の手法は本研究課題で予定している腸内細菌のシングルセルゲノム解析に応用可能であり、腸内細菌と細胞内共生細菌の相互作用を考慮する上でも有益な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は、計画立案当初の予想よりも他の研究課題の遂行に多くの時間を取られたこともあり、計画書において予定していたアッセイ系の構築を完了することができなかった。しかし一方で、他の研究課題において用いた技術には本研究課題と共通のものも多く、腸内細菌叢の解析やゲノム解析については実験手法の検討や情報解析技術の習得を予定に先んじて行うことができたことから、全体として「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは初年度に行う予定であったアッセイ系の構築に注力する。その後、計画通り腸内細菌-脳-腸相関に関与する細菌因子の同定に取り組む。また、腸内細菌以外のショウジョウバエ共生細菌(スピロプラズマやボルバキア)のゲノム解析についても、宿主や腸内細菌との相互作用、さらには腸内細菌-脳-腸相関への関与といった視点から、本研究課題に組み込むことを検討したい。
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Causes of Carryover |
当該年度においては予定していたアッセイ系の構築を行わなかったため、それに必要であった実験用試薬および器具類の購入費が残った。一方、当該年度に実施した研究に使用した試薬および器具類は、他の研究課題で用いるものと共通であり、所属研究機関の交付金で購入したものを使用したため、新たに購入する必要がなかった。さらに、参加予定の学会がコロナ禍により「みなし開催」となったため、旅費の使用がなかった。以上の理由により、次年度使用額が生じることとなった。 繰越分と翌年度分に請求した助成金については、持ち越したアッセイ系の構築および新たに開始する細菌突然変異系統の作成やゲノム解析に必要な試薬および器具類の購入に充てる。
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