2021 Fiscal Year Research-status Report
キイロショウジョウバエにおける腸内細菌-脳-腸相関の分子メカニズムの解明
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19K06081
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安佛 尚志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30392583)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 腸内細菌 / 共生細菌 / スピロプラズマ / ファージ / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ショウジョウバエとその腸内細菌叢を研究対象として、腸内細菌-脳-腸相関に関与する細菌および宿主双方の因子を明らかにすることを目的としている。2021年度は、これまで諸々の事情により遅れていたアッセイ系の構築と行動実験を行うとともに、腸内細菌以外のショウジョウバエ共生細菌のゲノム解析についても、これまでに得られたデータの解析を進める予定であった。しかし、昨年度に続くコロナ感染症対策の影響により、行動実験については予定通りに研究を進めることができなかった。一方、近年、細菌に感染するファージ(バクテリオファージ)が宿主に及ぼす影響が注目されていることから、ショウジョウバエ体内に存在するファージのゲノム解析にも新たに取り組んだ。腸内細菌以外の共生細菌に感染していないショウジョウバエと、共生細菌スピロプラズマに感染しているショウジョウバエを対象に、ファージ粒子の精製、電顕観察およびゲノム解析を試みた。電顕観察においては、腸内細菌以外の共生細菌に感染していないショウジョウバエからはファージ様粒子の存在は確認できなかった。一方、スピロプラズマに感染したショウジョウバエのサンプルにおいては多数のファージ様粒子が観察された。このサンプルから精製したDNAより、次世代シーケンサーを用いて取得した配列のほとんどが、スピロプラズマゲノム中に10コピーほど存在する、プロファージと推定される19kbの領域にマッピングされた。ショートリードのアセンブルによって得られたコンティグ中、最もカバレッジが高いのも、このプロファージに相当するコンティグであったことから、粒子として産生されているファージのほとんどはこのスピロプラズマファージであることが示された。以上の成果について学会発表を行った。また、宿主昆虫-腸内細菌-共生細菌-ファージの系を総合的に解析するための基礎技術を確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
主にコロナ禍による出勤制限により、2021年度に予定していたアッセイ系の構築と行動実験を進めることができなかったため、全体として「遅れている」と評価した。一方で、昨年から研究計画に組み込んだ、腸内細菌以外の共生細菌のゲノム解析を進めるとともに、ファージのゲノム解析も取り入れることにより、今後、宿主昆虫-腸内細菌-共生細菌-ファージの系を総合的に解析するための基礎技術を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで諸々の事情により遅れていたアッセイ系の構築と行動実験を進め、腸内細菌-脳-腸相関に関与する細菌因子の同定に取り組む。一方で、腸内細菌以外のショウジョウバエ共生細菌(スピロプラズマやボルバキア)やファージのゲノム解析についても、宿主や腸内細菌および共生細菌との相互作用、さらには腸内細菌-脳-腸相関への関与といった視点から本研究課題に組み込むとともに、これまでに得られたデータの解析と論文化を進める。
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Causes of Carryover |
コロナによる出勤制限の影響で研究の進捗が遅れたため。研究期間を1年延長し、アッセイ系の構築と行動実験の実践、ショウジョウバエ系統の飼育維持、各種細菌およびファージのゲノム解析等に必要な一般試薬やソフトの購入(アップデート)に使用する予定。
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