2023 Fiscal Year Research-status Report
キイロショウジョウバエにおける腸内細菌-脳-腸相関の分子メカニズムの解明
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19K06081
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安佛 尚志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 副ラボ長 (30392583)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 共生細菌 / スピロプラズマ / ボルバキア / ゲノム / ファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ショウジョウバエとその腸内細菌叢を研究対象として、腸内細菌-脳-腸相関に関与する細菌および宿主双方の因子を明らかにすることを目的としている。さらに、ショウジョウバエ体内に存在する、腸内細菌以外の共生細菌にも解析対象を拡げ、体液中に存在する共生細菌スピロプラズマやそのファージ、および細胞内共生細菌ボルバキアのゲノム解析にも取り組んでいる。2023年度は、ショウジョウバエ共生細菌のゲノム解析について、これまでに得られたデータの解析と論文化を進めると同時に、諸事情により遅れていたアッセイ系の構築と行動実験にも取り組み、今後の解析に向けた基盤を構築する予定であった。そこで、ショウジョウバエ共生細菌スピロプラズマ2系統とそのファージのゲノムについて、これまでに得られたデータの解析を進めたが、スピロプラズマゲノム中に存在するプロファージ領域が多数(10ヶ所以上)であったことや、おそらくはそれを反映して、産生されたファージのゲノムにも多様性が認められたことから、予想よりもスピロプラズマ及びファージの完全ゲノムの構築に時間を要した。現在、解析結果の最終確認を進めるとともに、論文を執筆中である。また、シングルセル解析により得られたフタスジショウジョウバエのオス殺しボルバキアの環状ゲノムの解析を進め、オス殺し遺伝子の候補とそれ以外の生殖操作関連遺伝子の存在の有無を明らかにした。オス殺し共生細菌の完全ゲノムは最近複数の昆虫から報告されつつあり、オス殺しの進化を考える上で意義のある成果である。なお、フタスジショウジョウバエのボルバキアを含む複数の昆虫共生細菌ゲノム解析及びシングルセル技術の有用性について、学会発表を行った。 一方、アッセイ系の構築と行動実験については、前年度に引き続き、研究時間の確保が難しかったため、計画通りに進めることができなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
腸内細菌以外の共生細菌やファージのゲノム解析については、論文投稿に向けて、これまでに得られたデータの解析を進めたが、解析対象ゲノムの特異性により予想以上に時間を要したこともあり、年度中の論文発表には至らなかった。また、研究開始当初のコロナ感染症対策の影響に加え、2022年度より所属ラボの副ラボ長に就任したことでラボ運営業務が多忙となり、当年度も、予定していたアッセイ系の構築と行動実験を進めることができず、研究期間をさらに1年間延長することにした。そのため、「遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
腸内細菌以外のショウジョウバエ共生細菌やファージのゲノム解析については、スピロプラズマとファージの解析を完了し、論文化に注力する。オス殺しボルバキアのゲノムについては、解析を進めるとともに、場合によってはオス殺しの検証実験を追加した上で、論文化を目指す。 上記と並行して、これまで諸事情により遅れていたアッセイ系の構築と行動実験にも取り組む予定であるが、本課題の研究期間と労力を考慮して、行動実験以外の手法を用いて、腸内細菌が宿主(の脳)に及ぼす影響を検出することも検討中である。
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Causes of Carryover |
所属ラボの副ラボ長就任に伴い多忙になったことで研究時間が減少し、当年度に予定していた研究の進捗が遅れたため、研究期間を1年延長した。次年度使用分については、ショウジョウバエ系統の飼育維持、各種細菌およびファージのゲノム解析等に必要な一般試薬やソフトの購入(アップデート)、論文投稿料として使用する予定である。
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