2020 Fiscal Year Research-status Report
超希少な運動性放線菌の選択分離方法の確立と遺伝資源としての保全
Project/Area Number |
19K06086
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
山村 英樹 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (70516939)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超希少放線菌 / 遺伝資源 / 選択分離法 / 土壌 / 分類 |
Outline of Annual Research Achievements |
放線菌は土壌などの環境試料中に多く存在しており、その多くはストレプトマイセス属が占めている。一方で、残り5%は希少放線菌と呼ばれ、さらに運動性を有する放線菌はさらに分布数は低く、全放線菌の1%にも満たない存在である。我々はこの1%を選択的に分離する技術を開発することで、超希少な運動性放線菌を取得し、遺伝資源として保全を行うことを目的とする。 我々は従来法である「再水和-遠心沈殿法(Hayakawa et al., 2000)」とは原理を異にする「バルク土壌浸漬法」の開発を行い、アクチノプラネス属をはじめ、カテヌロプラネス属やキネオスポリア属など計 8 属 32 種といった多様な運動性放線菌を分離する事に成功した。しかしながら、放線菌以外のバクテリアがプレート上に多数分離されているため、プレート上における運動性放線菌の割合は必ずしも多くはなかった。 そこで、運動性放線菌以外のバクテリアの出現を抑制するため、土壌の風乾を行ったところ、バクテリアの出現数を著しく減少させることに成功した。さらに、運動性放線菌の選択性・特異性を高めるため、培地に抗生物質を添加すること事を試みた。添加する抗生物質はアミドグリコシド系抗生物質8種類について検討したところ、スペクチノマイシン、トブラマイシン、ネオマイシンについてはアクチノプラネス属の選択性を高め、更に、アミカシン、ストレプトマイシンはアクチノプラネス属の特定種の選択性を高める事が分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度の目標は培地上に生育するバクテリアの出現を抑制し、運動性放線菌の出現の選択性を高め、特異的な種の検出が可能な方法を提案する。 【バルク土壌浸漬法】土壌の風乾処理は分離現場でも利用可能とするため、風乾を行わないいわゆる生土壌を使う事を特徴としている。しかし、バクテリアを減少させる最も効果的な方法は風乾であることが知られている。そこで、通常の土壌風乾2-3日を1晩に変更したところ、極めて効果的にバクテリアの出現を抑制することができた。 【高度な選択分離】さらに運動性放線菌の選択性・特異性を高めるため、培地に抗生物質を添加する事を試みた。添加する抗生物質はアミドグリコシド系抗生物質8種類を選択し、既知のアクチノプラネス属菌株に対する抗生物質耐性を調べた。その結果、スペクチノマイシン、トブラマイシン、ネオマイシンについてはアクチノプラネス属の選択性を高め、更に、アミカシン、ストレプトマイシンは特定種の選択性を高める事が分かった。実際の土壌で評価を行ったところスペクチノマイシンでアクチノプラネス属の出現抑制効果を確認できた。 以上の事から、風乾と抗生物質を利用することでバクテリアの出現を抑制し、運動性放線菌の選択性と特異性を向上させた分離方法を「改良バルク土壌浸漬法」と名付け、選択分離法として広く公開して行く予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的な分離方法の構築をすることができたため、今後は様々な土壌やリターなどから運動性放線菌の分離を行う。具体的には、畑や森林の土壌を山梨県各地から収集し、改良バルク土壌浸漬法の運動性放線菌の選択分離方法として普遍的な効果があることを確認していく。この過程で得られた分離株については16S rDNA配列を用いた解析を行い、新種と推定される菌株についてはゲノム解析や生理性状試験、化学分析試験を行い、分類学的な総合評価を行い、新種の提案を行っていく。
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