2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of frenzy and proposal of conservation plan in hawksbill and loggerhead turtles
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19K06089
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
斉藤 知己 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (80632603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河津 勲 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 上席研究員 (50721750)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 絶滅危惧種 / 資源保全学 / 動物生態学 / フレンジー / 孵卵温度 / 日内変動 / タイマイ / アカウミガメ |
Outline of Annual Research Achievements |
IUCNのレッドリストにおいて危機的絶滅寸前種とされるタイマイの保全と、伝統産業の存続を図るために、その生態的知見の充実と生息環境の回復、人工環境での繁殖と育成の技術の確立等が必要である。本研究では、孵卵温度と遊泳水温がタイマイの孵化や幼体の運動性や代謝に与える影響を検証し、本種幼体のフレンジー特性と生残率を高める条件を考察することを目的とした。 沖縄美ら海水族館の人工浜から約100卵×4巣分を輸送して高知大学総合研究センター実験室の孵卵器へ収容し、高温孵卵区(31.0℃)と低温孵卵区(27.5℃)に分けて孵卵した。孵化を確認した日から数えて6日目を実験開始日とし、それぞれの孵化幼体を形態計測後に高温遊泳区(31.0℃)と低温遊泳区(27.5℃)に分け、泳力を測定開始から0~4、24、48、72時間後に測定した。 その結果、孵化率は高温孵卵区でより高い結果となり、低温を経験したことが胚発生の妨げになったと考えられた。泳力は、高温孵卵区や高温遊泳区でより大きい結果となった。このことから、発生時や孵化後のわずかな期間に高温を経験することによって個体の生理活性が高まると考えられた。また、平均泳力やパワーストローク数は測定開始時(0時)に著しく高い個体がみられたものの、それから4時間後までに低下し、最小値を記録した。 以上より、タイマイのフレンジーは約4時間以内で収束し、初期生活史において沿岸性の強い習性と関連があると考えられた。また、本種の適切な孵卵条件として低温を経験させず、高温で孵卵することが重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元~2年度に八重山諸島黒島西の浜においてタイマイの産卵場所の嗜好性を調べるとともに、産卵シーズンである6~9月に植生下の日陰と植生際の砂中温度を記録した。黒島西の浜でこの2年間に記録されたタイマイの産卵回数は計8回であり、内6回が植生内、2回が植生の際に産卵した。砂中温度については植生際に比べて植生内の砂中温度の日内変動幅が小さい傾向が見られた。 また、アカウミガメおよびタイマイにおいて一回の産卵のうち約100卵を、29℃で一定の定温区、29℃を基準に日内変動±1℃とした変温区①、±2℃とした変温区②の3つの実験区に等分して孵卵し、孵化後、孵化率の算出、幼体の外部形態・運動性等の測定を行った。その結果、両種とも孵卵温度の日内変動は、幼体の孵化率低下と鱗板配列変異など、生残に負の影響をもたらすことが分かった。これらより、タイマイにみられる植生下への産卵は孵卵温度の日内変動の負の影響を緩和させる効果があり、本種の産卵地における安定植生帯の保全は不可欠であると考えられた。 我が国におけるタイマイの生息数は大変少なく、例年、沖縄本島以南の島嶼の海岸で10回程度しか産卵が確認されていないため、自然卵からの試料となるサンプルの十分な確保は見込めない。研究分担者の所属する沖縄美ら海水族館、および石垣べっ甲株式会社石垣事業所ではタイマイの人工環境下での繁殖に成功している。そこで、本研究では、人工環境下で繁殖に成功した本種の卵を研究に利用する事に合意を得たものの、令和元年度以降の研究ではいずれの産卵巣も孵化率が低く、実験に供試できた孵化幼体が少なかった。実験の結果から得られた幼体の形態や運動性等の傾向としては、期待された結果であったが、それを普遍的な知見として一般化するには依然として標本数が十分でない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元~2年度に、タイマイにおいて孵卵平均温度を29℃として0、±1,±2℃の日内変動を施した場合、変動が大きいほど幼体の孵化率低下と鱗板配列変異など、生残に負の影響をもたらすことが分かった。さらに、令和3年度に、本種の適切な孵卵条件として低温を経験させず、高温で孵卵することが重要であることが分かった。 令和4年度には、これまでの条件を総合し、平均孵卵温度を31℃として日内変動を施した場合について、タイマイの幼体の孵化率や運動活性を比較することで、その生残に及ぼす影響を明らかにしていく予定である。このことで、人工環境下では依然として低いままである本種の卵の孵化率を高める対策を立案することができると考えている。
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Causes of Carryover |
令和3年度の当初に予定していたサンプルの収集、研究発表等の計画を遂行できなかったため、繰り越し金が生じた。これは令和4年度の計画に基づいて使用する予定である。
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Research Products
(1 results)