2020 Fiscal Year Research-status Report
Evaluation of coral-killing sponge Terpios
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19K06091
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
山城 秀之 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (80341676)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | テルピオス海綿 / サンゴ / 成長機構 / 環境要因 / 幼生 / シアノバクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
テルピオス海綿は、サンゴを被覆死するため、白化現象やオニヒトデの食害と並んで、サンゴ礁の脅威の一つとなっている。今後、サンゴ礁は海藻や海綿に置き換わると予測されており、海綿の調査研究が求められている。本研究の2020年度の野外調査の結果、テルピオス海綿を石垣島東海岸および黒島(初確認)で確認した、また、沖縄島では東村慶佐次と国頭村佐手で新規かつ大規模集団を確認した。 本種の幼生放出を国内で初めて確認できた。幼生放出間近の枝をカテゴリー分けすることにより、ほぼ確実に幼生を確保できる技術を確立した。その手法を用いて、幼生放出パターンを毎月調査した結果、変動はあるものの7月から11月まで常時確認できた、特に9月が多かった。12月には野外で観察できなくなったため、水温との関係が極めて深いことがわかった。月齢と幼生放出の関係を調査した結果、満月後約5日後に大量放出することを明らかにした。更に、2時間毎に幼生放出数を計測した結果、深夜0時から4時にピークがあることを初めて明らかにした、他の海綿の幼生放出が日中に多いことから、深夜放出は本種の大きな特徴と言える。同様に、野外においても深夜に放出することを確認した。プランクトンネットを用いて採集した結果、1立方メートルに約3,800匹の密度となった。 採取した幼生を用いて、幼生の保有する共生シアノバクテリア密度、ショ糖を用いた幼生の比重、遊泳速度を計測した。定着した幼生の生残率は小さく、長期の飼育は困難であった。これらの結果は、本種の成長および分散機構の解明に今後大きく寄与することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内におけるテルピオス海綿の分布状況の解明については、コロナ禍の影響があり、離島調査が十分とは言えないが、確実にデータの積み上げができており、本種が奄美諸島から与那国島までほとんどの島に分散していることがわかってきた。その分散に極めて重要な幼生の確保に2020年度成功し、本種の定着や成長について重要な情報が得られるようになったため、今後の研究が大きく進展することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
テルピオス海綿の分布調査が行われていない離島の調査を継続し、本種の分布状況と現状のモニタリングを実施する。また沖縄島でも本種の新規の分布場所の確認が続いており、引きつづき追記してデータを蓄積していく。 2020年度に国内で初めて幼生を確認し、放出時間や時期を確定および定着成長実験を行った。2021年度は前年度で解決できなかった幼生を用いた実験を実施し、足りないデータを補足する。一旦定着すると長期に渡ってその場所から拡がっていく可能性があるため、除去実験の有効性を実験的に検証する。
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Causes of Carryover |
コロナウィルス対策で出張を抑制したため、次年度使用額が生じた。投稿論文の英文校正に使用する予定である。最終年度は有効に活用する。
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