2020 Fiscal Year Research-status Report
土地利用の履歴が微生物群集の変化を介して植生に及ぼす効果
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19K06095
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
下野 綾子 東邦大学, 理学部, 講師 (30401194)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大和 政秀 千葉大学, 教育学部, 教授 (00571788)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アーバスキュラー菌 / メタゲノム / 半自然草原 / 土地利用の履歴 |
Outline of Annual Research Achievements |
かつて国土の1割以上を占めていた半自然草原は、1/10にまで減少し、それに伴い多くの草原性の植物種の絶滅が危惧されている。草原の再生において、造成跡地や耕作放棄地等では外来種が優占し本来の草原とは異なる植生が成立することから、過去の土地利用の履歴が長期にわたり植生に影響を与えることが指摘されてきた。その原因として土壌の化学特性の違いが着目されてきたが、本研究では微生物群集との生物間相互作用に着目した。 昨年は千葉の半自然草原を対象にしていたが、新たに長野県の菅平および霧ヶ峰の半自然草原においてもアーバスキュラー菌の群集構造を評価した。草原26カ所から採集したバルク根とススキの根から抽出したDNAを用い、アーバスキュラー菌(AMF)のrDNA SSU領域を増幅し、Miseqによりシークエンスを行った。キメラ配列および低品質配列を除去し、97%相同性でクラスタリングした。得られたコンティグを操作的分類単位(OTU)として進化的に同一の菌種とみなした。AMFデータベース(maarjam)とBLAST検索を行い、近隣既知配列群の所属分類群に基づいて種同定を行った。 草原の継続年数から古い草原と新しい草原にタイプ分けを行い、このタイプがAMF組成に及ぼす効果をPERMANOVAで検定したところ、有意に異なった。このことは長年維持されてきた半自然草原には、宿主に関わらず特有のAMF群集が形成されていることを示している。 また半自然草原と造成地の土壌を用いて単離したAMFを用いて草原性在来種の感染実験を行っている。今後、生育に及ぼす効果を評価する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染予防のため2020年6月まで研究がストップしたが、新たな半自然草原でのアーバスキュラー菌根菌の群集構造を調査し、過去の履歴が有意な効果を及ぼしていることを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
一般的にAMFの地域固有性および宿主特異性は低いと言われているものの、多くの研究で同所的に生育している在来種と外来種とで共生するAMF群集が異なることが報告されている。またAMFの種類によって宿主植物の成長量の促進効果が異なる例、在来植物の成長が在来菌根菌群集の感染によって、より促進される例が報告されている。しかしAMFと植物の関係は多対多の複雑なネットワークとなっていること、AM菌は培養が困難であることからその群集構造と植生の関連については、いまだ不明な点が多い。 本研究では、半自然草原と造成地とで菌根菌群集が異なることを明らかにしており、それぞれからアーバスキュラー菌の単離にも成功している。現在、感染実験を行っていることから、それらの結果を評価し、実際に土地利用の履歴が菌根菌群集の違いを介して植生にも影響を与えているのかを検証する。
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Causes of Carryover |
2020年度は新型コロナ対策のため、6月まで研究がストップしたこと、学会が全てオンラインとなったために、学会旅費が発生しなかったことで次年度使用額が生じた。 最終年度の助成金は、異なる菌種と共生させている栽培個体の測定や共生菌の解析、投稿論文の英文校閲費や論文のオープンアクセス費、学会参加費にあてる。
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Research Products
(1 results)