2020 Fiscal Year Research-status Report
ペットショップの特異な個体群－外来巻貝の移入リスクの評価
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19K06097
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| Research Institution | Nihon University |
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Principal Investigator |
中井 静子 日本大学, 生物資源科学部, 助教 (40582317)
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2019-04-01 – 2022-03-31
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| Keywords | ペットショップ個体群 / 外来無脊椎動物 / アクアリウム / 移入リスク / 淡水巻貝 / 水草 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
在来河川への侵入が報告されている外来の淡水性無脊椎動物は、貝類・甲殻類・プラナリアなどがいるが、ほとんどの侵入経路は不明である。侵入経路が明確ではない場合、その多くがアクアリウム（鑑賞用水槽）を介して運ばれたのではないかと推定されるが、詳しい研究はほとんどない。一方、魚の飼育を趣味とするアクアリストにとって、外来性の巻貝などが水槽内で大増殖することは珍しいことではなく、駆除商品も販売されている。本研究では、ペットショップ内の水槽施設に多くの外来淡水巻貝が生息しているのではないかと予想し、ペットショップに混入している淡水巻貝の種組成調査、ペットショップ水槽からのサンプル収集、店員への聞き取り調査を行うこととした。
2年目である本年度は、1年目の調査結果を受け、調査対象生物を増やし実施した。1年目の調査では、水槽内に意図せず侵入し大増殖する迷惑貝のみを調べたが、ペットショップでは苔取り貝としてさまざまな貝類を販売していることがわかった。そこで、本年度は商品として販売されている苔取り貝も調査対象とした。さらに、ペットショップの店員への聞き取り調査の結果、水槽内に巻貝が混入する原因の第一候補は水草であると考えられた。よって、本年度はペットショップで販売されている水草の調査と水草が実際に巻貝の移動に関わるのかを検証した。
本年度は、巻貝調査を1都1府16県の計110店舗およびwebサイトにて、水草調査を1都1府5県の計34店舗およびwebサイトにて行った。迷惑巻貝の発見率は昨年度と同様にほぼ100％であり、サカマキガイなどの外来種が多く見つかった。また、苔取り貝の中にも外来淡水巻貝が複数種含まれていた。販売されている水草の中にも多くの外国産が含まれており、水草から巻貝が他の水槽に侵入するかを水草の飼育実験により検証したところ、水草を介して巻貝やその他の生物が移動する例が確認できた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度末からのコロナ感染症拡大により、本拠地から遠方の地域における採集調査が実施できずにいる。また、DNA解析が本格的に始まっていないことから、やや遅れていると判断した。
1年目は、外来巻貝の調査を行った全ての店舗で聞き取り調査を行ったため、神奈川県周辺が主な調査地であった。2年目は、全国のペットショップにおける外来巻貝の実態を調べるため、聞き取り調査よりもサンプル採集を優先した。その結果、外来巻貝のペットショップへの侵入状況について、東北地方、関東甲信越、東海地方、中部地方、北陸地方の各地域である程度の店舗数を調査することができた。また、本年度が1年目となる水草調査も1都1府5県で行うことができた。しかし、本来予定していたより遠方の調査地（沖縄地方、九州地方、四国地方、中国地方、北海道など）へは、コロナ感染症に関わる緊急事態宣言の発出、出張や学外での調査の許可が下りづらい職務状況、調査希望先のコロナ感染者数増加により、本年度は実施することができなかった。これにより、調査予定店舗数やサンプル採集が予定より遅れ、外来巻貝の種同定を行うためのDNA解析がまだ十分に進んでいない。
一方、調査を行ったペットショップからはほぼ100％サカマキガイなどの迷惑巻貝が発見され、本年度より行った苔取り貝調査からも多くの外来種が見つかった。さらに外国産の水草も多く販売されており、水草を原因とした巻貝とその他の複数の生物の移動も飼育実験により確認された。
ペットショップにおける外来巻貝の2年間の調査結果について、2021年3月の日本生態学会で発表を行った。
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| Strategy for Future Research Activity |
3年目の本年度は、可能な限り沖縄地方や西日本、北海道で調査を行い、ペットショップへの外来巻貝の移入状況について全国的な考察を行いたい。また、トランペットスネールと呼ばれるヌノメカワニナ系の巻貝には、形態的な特徴が異なる個体が複数確認できているが、形態による種同定が難しく、現段階では詳細な種判別ができていない。そのため、DNA解析による種同定を行い、外来種の種数の確定と原産地の推定を行う。さらに、苔取り貝として販売されている巻貝は、商品名が多様で、調べても分類群を推定する情報が全くないものもみられる。特に外国産で和名のついていない苔取り貝にこの傾向が強いため、これらの不明種についてもDNA解析による種同定を行う。
水草と水草が媒介する生物についても、引き続き調査と飼育実験を行う予定である。一部の生物については、ペットショップ周辺の野外環境における生息の有無を調査し、ペットショップで見つかった外来種の由来を推定する。
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| Causes of Carryover |
本年度は、遠方の調査地でのサンプリングを予定していたが、コロナ感染症拡大防止に関わる緊急事態宣言の発出や出張および学外調査の中止、研究に関わる学生の登校自粛などの理由によりほとんど行えなかった。そのため、旅費を多く計上していたが、本年度の旅費支出が少なかった。また、同様の理由に関わり予定していたDNA実験が進まず、試薬等の消耗品の支出も少なかった。
次年度は本年度に行えなかったより遠方の調査を行う予定であるため、旅費の支出が生じる。また、DNA解析用の消耗品、得られた巻貝の観察や記録を行うため顕微鏡周辺機器の支出を予定している。
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