2020 Fiscal Year Research-status Report
博物館鳥類標本を用いた過去の遺伝的集団構造の復元:現在との比較と保全への応用
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19K06099
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
杉田 典正 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 短時間非常勤研究員 (20620876)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 博物館 / 標本 / 保全 / 遺伝子汚染 / 移入 |
Outline of Annual Research Achievements |
博物館に保管される鳥類の標本を活用し、該当種の保全のための研究を行っている。博物館の標本と現生個体群が有する遺伝情報を比較することにより、過去から現在に至る該当種の遺伝的多様性の変遷を調べている。また、該当種は複数の亜種に分かれているが、その分布域の境界は不明瞭である。過去に行われた人為的な移動や導入によって、遺伝子的な撹乱が起きた可能性もあり、本研究は、古い標本と現生個体群の両方を用いて総合的に対象種の遺伝的多様性の変化について調べている。本研究は、過去の遺伝的集団構造を復元し、遺伝的多様性の時間的変化を推定することで、人間活動による野生生物への影響を評価する。博物館資料の充実が時間を超えて野生生物の保全に貢献できることを示す。 該当年度は、新型コロナの影響により対象鳥類の繁殖期(4月-5月)に野外調査行われなかったため、研究遂行にあたり重要な個体群である見なせる特定地域の個体群のサンプルを得ることができなかった。一方、標本保管施設に所蔵されている該当種標本について約250個体の標本組織片を採取することができた。また、昨年度に収集したすべての現生個体群の仮剥製を作成した。これのサンプルは非常に時間を要する作業であり、これまでに得られてこなかった。当該年度におけるサンプル収集は、野外調査で不十分な点があるが、最終年度におけるサンプル収集の布石になる経験を積めた。また標本組織片と新鮮な筋肉片を得たことにより、最終年度における分子実験と解析が可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は野外調査を伴う。特に鳥類の繁殖期の4月ー5月にサンプル収集をする予定であったが、所属機関では該当年度では新型コロナの影響で野外調査が自粛なった。よって、もっとも効率的にサンプル収集ができる時期にサンプル収集をすることができなかった。この影響は、研究遂行に必要である特定地域の個体群のサンプルが得ることを不可能にした。来年度に再び特定地域で捕獲を試みて、遅れている研究項目を回復する。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナの影響で該当年度に実施ができなかった特定地域における標本採集と組織片採取が研究の推進に重要である。また、所属が変更になり、設備面において分子実験の実施がやや難しくなった。今後、研究推進にあたり分子実験の割合が高くなる。分子実験を推進するにあたり、実験環境の整備が課題である。
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Causes of Carryover |
新型コロナの影響により野外調査に用いる旅費の使用額が予定より少なくなったことから次年度使用額が生じた。翌年度の請求と合わせて、旅費として使用する。
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