2020 Fiscal Year Research-status Report
絶滅危惧種オランウータンの野生復帰事業改善を目的とした法医学的研究
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19K06100
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
久世 濃子 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 協力研究員 (60437192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 礼子 慶應義塾大学, 文学部(日吉), 教授 (30356266)
坂上 和弘 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, グループ長 (70333789)
澤藤 匠 (蔦谷匠) 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 助教 (80758813)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 野生生物保全 / 大型類人猿 / 霊長類 / 熱帯雨林 / 自然人類学 / 法医学 / 動物行動学 / 受傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、絶滅危惧種の霊長類オランウータン(Pongo属)を対象として、主に法医学(形態学)及び動物行動学の手法を用いて、野生個体の受傷痕(ケガの痕跡)を分析することで、野生下での生存リスクを明らかにし、本種の野生復帰事業を改善することを目指す。具体的には、(1)法医学的手法を用いて、博物館等に収蔵されている骨格標本を対象に、骨折の治癒痕等を調べ、その原因を推定するとともに、性別や年齢による違いがあるかどうか調べる。(2)野生下で生体の受傷(顔や体の傷跡)の形態や部位を調べ、その特徴を明らかにする。 今年度は、コロナ禍のためにマレーシアを含め海外調査を行うことができなかったので、主に過去にマレーシアで収集した資料の整理・分析と、国内の飼育下で収集した資料の分析を行った。代表者は、過去に収集した写真や動画の分析を行うとともに、謝金を使って、2019年以前に収集した行動観察データの入力作業を行った。分担者の蔦谷は、基礎的な資料を得る為、飼育下の個体から採取した試料について同位体分析を行った。 2019年度にマレーシア計8個体の骨格標本からDNA分析用のサンプルを、現地共同研究者のVijay Kumar博士(マレーシア・サバ大学)に渡し、分析を依頼していた。しかしサバ州内で発生したCOVID-19のパンデミックとロックダウンの影響で、2021年3月までDNA分析を行うことができなかった。2021年3月末にKumar博士が実験を行い、8個体中、特に重要な4個体について、性別判定や個体識別を行うのに十分なDNA量を抽出できたことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミックにより、当初計画していた海外での調査を、ほとんど行えなかったため、研究は遅れている。マレーシアでもCOVID-19のパンデミックが複数回発生し、現地でのオランウータンの追跡調査も中断せざるを得なかったため、新しい行動観察や受傷に関する新しいデータを収集することはできなかった。 代表者の久世は、過去に収集した資料をもとに、「遊び」と受傷の関係について、行動分析を行ったが、研究にあてる時間が不足したため、十分な数の事例を分析するに至らなかった。現地で、同位体や微量元素について分析する予定だった分担者の蔦谷も、海外渡航できなかったため、国内の動物園で収集した資料を対象に、基礎的な調査分析を行った。分担者の河野と坂上は、海外渡航できなかった為、分担している研究内容と研究費を翌年度に繰り越すことになった。 またDNA分析を依頼していた現地共同研究者のVijay Kumar博士は、サバ州内でのロックダウンによって実験が行えない期間が発生するとともに、サバ州内でのCOVID-19のPCR解析を担当することになった為、2021年3月まで、オランウータンの試料の実験を行うことができなかった。 このように2020年度はCOVID-19のパンデミックにより、重大な遅れが生じたが、一部を国内での調査に振り向けることで、わずかな進捗が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年4月現在、マレーシア(サバ州)での新型コロナウィルス感染は抑えられつつあるが、変異株の流行によって事態が急変する可能性はあり、余談を許さない状況である。共同研究者Vijay Kumar博士は、2021年3月に、代表者が前年度に渡した試料からDNAを抽出することに成功している。分析に必要な十分なDNAが含まれていることがわかった為、今年度はキットを使用して性別判定を行う計画である。また今年度からKumar博士の長年の共同研究者である田島が分担者に加わった。可能であれば田島が現地に渡航し、Kumar博士に代わってDNA分析を行う。 少なくとも2021年度前半も、海外への渡航は難しいと考えている。そこで当面は、過去に収集した資料をもとにした動物行動学的な分析-コドモの遊びの映像や受傷の写真の分析、を国内で行う予定である。また分担者の蔦谷は昨年度同様、国内で収集した資料を対象に基礎的な分析を行いつつ、海外渡航が可能になれば、海外での調査を行う。河野が担当する形態学的分析や坂上が担当する法医学的分析については、海外渡航が難しい場合は、マレーシアを含む海外でCTスキャナーを用いた調査を行い、データを日本で解析することも検討する。これについては、マレーシア・サラワク博物館のLim Tze Tshen氏に協力を依頼する予定である。 以上より、2021年度は、海外への渡航が難しくとも今までに収集した試料や、追加の分担者や協力者の支援を得て、研究を継続することを計画している。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスのパンデミックにより、2020年度は海外での調査を行うことができなかった為。2021年度に海外渡航が再開され次第、現地での調査を行いたいと考えているが、渡航が難しい場合は、現地の協力者と連携して研究をすすめることを計画している。またDNA分析に関しては、分担者を1名増やし、現地に渡航して共同研究者に代わって実験を行うことも想定している。
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Research Products
(4 results)