2019 Fiscal Year Research-status Report
Chlorphytum comosum類の都市内帰化状況に関する研究
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19K06110
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
山田 宏之 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (80314558)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | オリヅルラン / 生育分布 / 最低気温 / 低温障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度調査においては、大阪府大阪市梅田駅周辺、奈良県奈良市(新大宮駅周辺、富雄駅周辺、平城山駅周辺)、京都府八幡市男山東地区の5か所においてオリヅルランの分布調査を行った。また、新大宮駅周辺、富雄駅周辺、平城山駅周辺において冬季の気温測定を実施し、奈良地方気象台のデータとの比較を行った。その結果、梅田駅周辺における高密度の植物分布が確認され、次いで奈良市新大宮駅周辺、奈良市富雄駅周辺、八幡市男山東地区、平城山駅周辺の順で植物密度が低下しているのを確認した。 奈良市の3地点で気温を計測した2019年12月4日から8日までのデータのうち、日最低気温を奈良地方気象台と比較すると、新大宮駅付近では平均して約0.5℃高く、富雄駅周辺では約1.5℃低く、平城山駅周辺で約0.1℃低いという結果になった。また、奈良地方気象台で計測された2019年の年間最低気温は-1.7℃であったことから、2019年において調査対象3地域の最低気温は、-3.0~-1.0℃程度に達していたと推定される。過去の大阪府における研究では、河内長野において最低気温が-2.0~-1.0℃程度になる可能性があると予想されていた。このことからも、今回の奈良市の対象地域は過去に調査を行った都市よりも寒い地域であると言えるが、それでもオリヅルラン類は屋外生育が可能であるということが明らかになった。 奈良市および八幡市においては、低温障害を受けたと考えられる枯れ込みを有する株が多く、これらの地域においては冬季低温の影響が大きく表れてきているものと推察される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画においては、関西圏郊外の調査地として東大阪市、柏原市、京都府八幡市を候補として想定していたが、予備的な調査を行った結果、奈良県奈良市および京都府八幡市を2019年度の調査対象として選定した。これらの地域は、従来、調査を行ってきた大阪府や兵庫県の地域よりも一段、冷涼であると考えられ、オリヅルランの屋外生育限界に近いのではないかと推定された。しかし、現地調査の結果、これらの地域においてもオリヅルランの屋外生育が確認され、生育限界線は更に低温な地域に存在することが明らかになった。このように、生育限界に関する新たな知見が得られた点は良い進捗であると考えられる。 また、目視観察においてオリヅルランの生育が確認されていた大阪市梅田駅周辺における詳細な生育分布図が作成できたことは重要な成果の一つである。これらの成果により、概ね2019年度に想定していた研究範囲は網羅されたものと考えており、進捗状況は良好である。 気温測定に関しては奈良市の3か所で行ったが、今後の測定のための機器が揃い、来年度以降の調査において活用が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度調査において、京都府八幡市においても多数のオリヅルランの屋外生育が確認できた。そのため、関西圏における調査範囲を更に寒冷な地域に拡大し、2020年度調査においては京都盆地内における生育分布調査を予定している。下京区周辺は都市化の影響により夜間気温が上昇している可能性が高く、オリヅルランの屋外生育が予測される。しかし、中京区、上京区、北区と北上するに連れて都市化の影響は少なくなり、急激に屋外生育密度が低下するのではないかと予想される。2019年度における予備的な踏査の結果、上京区付近ではオリヅルランの屋外生育が確認されていない。そこで、下京区から北区にかけて複数の調査区画を設けて、オリヅルランの屋外生育分布調査を予定する。また、これと併せて屋外気温測定の実施も予定している。 当初計画通り、東京都内における分布調査も実施する予定である。2019年度の大阪市内の調査区と対比可能な地域として、台東区の湯島天神周辺地域や、上野公園周辺地域、神田神保町付近を候補地として予備調査、本調査を行っていく予定である。 本研究は屋外調査が主であるため、新型コロナウイルス感染拡大の影響は受けにくいが、8月以降も現地への移動が制限されるような事態に至った場合は、東京都内の調査を中止して、関西圏中心の調査に切り替える予定である。
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