2022 Fiscal Year Annual Research Report
長期の無性繁殖を行うタケ類における有性繁殖の適応的意義の解明
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19K06120
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久本 洋子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (60586014)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | bamboo / 一斉開花 / 有害遺伝子 / 体細胞突然変異 / ジェネット |
Outline of Annual Research Achievements |
タケ類は60~120年の長期の無性繁殖後に一回有性繁殖するといわれているが、実際は種類によって有性繁殖を成功させるものと失敗させるものがある。モウソウチクでは開花後結実するが、ハチクは開花しても結実せず、地下茎から新たに再生した稈によって回復する。このことから、タケ類が長期間の無性繁殖を続けたのちに有性繁殖を失敗することもありながらも有性繁殖の機構を放棄していないことから、有性繁殖には例えば有害遺伝子の排除といったメリットがあるのではないかと仮説を立てた。本研究では、開花特性の異なるモウソウチクとハチクという2種においてジェネット解析を行い、ジェネット内の体細胞突然変異とエピジェネティック変異の違いを比較することを目的とした。 2021年度までに採集したサンプルを用い、2022年度にモウソウチクでは異なる開花周期をもつ3系統のサンプル、ハチクでは2つの個体群の開花前後のサンプルからDNAを抽出してGRAS-Di解析によって塩基配列の多型を調べた。その結果、モウソウチクでは3系統での多型数はそれぞれ53、52、52個となり差がみられなかった。ハチクでは1つの個体群では開花前と後で多型数は20個と27個となり差はほぼ無かったのに対し、もう1つの個体群では開花前が開花後よりも10倍近く多型数が多かった。モウソウチクは開花周期の長い系統ほど突然変異率は高くなり、ハチクでは開花前後の突然変異率はほぼ同等と想定したが、一部を除き予想に反した結果となった。 以上から、モウソウチクでは長期の栄養繁殖を続けていても体細胞遺伝子変異が大幅に蓄積されるわけではないことが示された。しかしハチクの結果から開花によって変異がリセットされる可能性もあり、本研究ではエピジェネティック変異の比較を行うことができなかったため、有性繁殖によって有害遺伝子が排除される可能性についてはさらなる研究が求められる。
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