2019 Fiscal Year Research-status Report
植物絶対寄生菌ウドンコカビの大規模系統解析に基づく木本・草本宿主への適応機構解明
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19K06124
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
白水 貴 三重大学, 生物資源学研究科, 助教 (10571789)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウドンコカビ科 / うどんこ病菌 / 系統推定 / 分類 / rDNA / MCM7 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウドンコカビ科内の信頼性の高い系統仮説を得ることを目的とし,rDNAとMCM7領域の塩基配列に基づく系統推定を行った.標本から抽出したDNAを用いたPCRの結果,新たに67サンプルのSSU rDNAと50サンプルのMCM7領域の配列を得ることができた.これらの配列を既報の塩基配列データと組み合わせ,ウドンコカビ科274種のLSU,5.8S,SSU,MCM7領域の配列を用いた系統解析を行った.その結果,先行研究で報告されている系統樹とほぼ同じ樹形が得られたが,その一方,①GolovinomyceteaeとPhyllactinieaeの分岐順序が異なる,②Phyllactinieaeが単系統群にならない,などの新たな系統関係も示された.PhyllactinieaeとErysipheaeはGolovinomyceteaeとの分岐後に多様化していることが推定され,非連鎖分生子+内部寄生または非連鎖分生子+外部寄生の系統が,連鎖分生子+外部寄生の系統から派生する仮説が示された.PhyllactinieaeはPhyllactinia+Leveillulaのクレードと,PleochaetaおよびQueiroziaからなるクレードに分かれた.この結果は,Phyllactinieaeの分類や,ウドンコカビ科における内部寄生の進化について新たな解釈が必要であることを示している.本研究では,過去最大規模のデータセットに基づく系統推定によりウドンコカビ科内の系統仮説を更新することができたが,依然,高次の系統関係は不明瞭であった.ウドンコカビ科のより頑健な系統仮説を得るためには,タンパク質コード領域を含むさらなる配列データを加えた系統推定が必要である.なお,これらの成果は原著論文(Shirouzu et al. 2020)にて公表済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ウドンコカビ科のこれまでで最も大規模なデータセットに基づく系統仮説が得られ,この成果を原著論文(Shirouzu et al. 2020)として公表することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
①ウドンコカビ科のより頑健な系統仮説を得ることを目的とし,タンパク質コード領域を含むさらなる配列データを加えた系統推定を進める.すでに検討したrDNAやMCM7領域に加え,系統推定に有用なタンパク質コード領域の検討を進めるとともに,これまで系統推定に用いられていない種を加えた解析を進める.
②ウドンコカビ科の木本・草本宿主への適応機構の解明を目指し,形態形質と宿主植物の進化的相関解析を進める.ある程度信頼できる系統仮説が得られた系統群について,順次,形態形質マトリックスの作成と試験的な解析を進める.
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Causes of Carryover |
残高が比較的少額のため使い切ることができなかった.次年度の試薬など消耗品購入費として使用する予定である.
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