2021 Fiscal Year Research-status Report
植物絶対寄生菌ウドンコカビの大規模系統解析に基づく木本・草本宿主への適応機構解明
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19K06124
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
白水 貴 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (10571789)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ウドンコカビ科 / うどんこ病菌 / 系統推定 / 系統種間比較法 / 祖先状態推定 / 状態間遷移推定 / rDNA / MCM7 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウドンコカビ科菌類において,木本・草本宿主への適応の過程でどのような形態形質の進化が起こったのかを解明する目的で,Cyctotheceaeをモデルとした系統比較法(Phylogenetic Comparative Methods, PCMs)による解析を行った.宿主タイプの祖先状態推定により,Cystotheceaeでは落葉樹型が最も祖先的であり,草本型は4回,常緑樹型は2回,それぞれ二次的に進化したと推定された.付属糸形態の祖先状態推定では,分岐型と渦巻型が最も祖先的であり,菌糸型と未発達型がそれぞれ3回と1回,二次的に進化したと推定された.ランダムフォレストの結果,宿主タイプは系統的距離と付属糸形態から高確率で予測可能であることがわかった.また,宿主タイプと付属糸形態の祖先状態推定から,これらの形質状態の同時的なシフトが複数の祖先ノードで生じていることが示唆された.この結果は,宿主タイプと付属糸形態の間に何らかの機能的な関係があることを示唆している.一方,系統樹全体で見た場合,これらの形質間において統計的に有意な進化的依存関係は検出されなかった.本研究により,Cystotheceaeの形質進化研究におけるPCMsの有用性が示された.これらの研究成果については原著論文(Shirouzu et al. 2022)にて公表済みである. また,さらなる検証を目的とし,別系統であるErysipheaeを対象とした同様の解析を進めている.信頼性の高い種同定がなされたErysipheae約180種のDNA塩基配列データ(ITS,LSU,SSU,MCM7)と表現形質データを収集し,解析に用いるデータセットを構築中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響で,予定していた野外調査や実験を行うことができなかった.そのため,現在の進捗状況としては遅れていると判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に行えなかった野外調査や実験を再開し,新たなサンプルを収集するとともに,Erysipheaeを対象とした系統推定や系統種間比較法による形質進化の解析を行っていく.
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Causes of Carryover |
補助事業期間を延長したため次年度使用額が生じた.次年度の試薬など消耗品購入費として使用する予定である.
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