2022 Fiscal Year Annual Research Report
植物絶対寄生菌ウドンコカビの大規模系統解析に基づく木本・草本宿主への適応機構解明
Project/Area Number |
19K06124
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
白水 貴 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (10571789)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ウドンコカビ / 系統種間比較法 / 系統推定 / 越冬戦略 / 形態 / 宿主 / 分類 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウドンコカビ目の日本における多様性解明を目的とした野外調査を行った結果,近年新種のサクラとして記載されたクマノザクラからCystotheceaeの1種Podosphaera prunigenaの発生を初めて確認した.この成果については原著論文(白水ら 2020)にて公表済みである. ウドンコカビ目の信頼性の高い系統仮説を得ることを目的とし,274種のLSU,5.8S,SSU,MCM7領域の配列を用いた系統解析を行った.過去最大規模のデータセットに基づく系統推定により,ウドンコカビ科内のより信頼性の高い系統仮説を得ることができた.この成果は原著論文(Shirouzu et al. 2020)にて公表済みである. ウドンコカビ目における宿主タイプと付属糸形態の進化的関係を明らかにすることを目的とし,Cyctotheceaeをモデルとした系統比較法(PCM)による解析を行った.宿主タイプの祖先状態推定により,Cystotheceaeでは落葉樹型が最も祖先的であり,草本型は4回,常緑樹型は2回,それぞれ二次的に進化したと推定された.付属糸形態の祖先状態推定では,分岐型と渦巻型が最も祖先的であり,菌糸型と未発達型がそれぞれ3回と1回,二次的に進化したと推定された.また,宿主タイプと付属糸形態の祖先状態推定から,これらの形質状態の同時的なシフトが複数の祖先ノードで生じていることが示唆された.この結果は,宿主タイプと付属糸形態の間に何らかの機能的な関係があることを示唆している.この研究成果については原著論文(Shirouzu et al. 2022)にて公表済みである.また,形質進化過程についてさらに検証するため,Erysipheaeを対象としたPCMによる解析を進めている.これまで186 OTUの配列および形質データを収集し,これらを用いた系統推定およびPCMによる解析を行っている.
|