2019 Fiscal Year Research-status Report
アポミクシス植物の有性繁殖の可能性と無性繁殖としての利点の解明
Project/Area Number |
19K06129
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
井上 みずき 日本大学, 文理学部, 准教授 (80432342)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 遺伝的多様性 / アポミクシス / MIG-seq / ドクダミ |
Outline of Annual Research Achievements |
理論的には無性繁殖のほうが有性繁殖より有利であると考えられており「有性繁殖の進化」は生物学上のパラドックスの1つと言われている。 無性繁殖のみに頼っていると考えられてきた植物として種子形成を介した無性繁殖であるアポミクシスをする植物がある。近年、アポミクシス種子で増えるセイヨウタンポポの花粉が二倍体のタンポポにかかることで、種間交雑が起きていることが明らかになってきた。このことから、アポミクシスをする植物であっても、無性繁殖のみ行っているわけではない可能性がでてきた。林縁や林床・空き地などに生育する多年生草本ドクダミは、地下茎で無性繁殖するとともに4枚の白い総苞片をもつ花序を発達させる。この花序にできた種子は一般にアポミクシスによるとされている。本年度は、このドクダミを材料として有性繁殖が行われ、遺伝的多様性があるのかどうかを検証した。日本30地点(青森から九州まで)、海外20地点のドクダミを採取し、DNAを抽出、MIG-seq法にて遺伝解析をした。その結果、日本と海外は大きく2つにクラスターが分かれた。日本国内では、遺伝型に地理的傾向はなく、個体群内・個体内でも、2つのクラスターが混在する形となった。このことは国内のドクダミは1遺伝子型のみではなく、複数ジェネットある可能性を示している。また、海外は遺伝的な分化の程度が大きく、とくにチベット集団は他の中国などの集団とは遺伝的に大きく分化している可能性が示された。また、雲南省内でも大きく分化している可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の30地点から葉を収集することができた。青森県から熊本県まで全国的なサンプリングがおおむねできている。また、海外の20地点の葉も知り合いの研究者から提供いただけたため、本研究で想定した以上に葉の採集ができた。遺伝子実験は順調に進展している。解析は通常の遺伝解析はできており、さらに良い方法がないかと模索しているところである。種子の休眠性についてははじめ、半年などはすでに実験済みであり、今後、1年後等を検討していくつもりであり、現在までのところ順調である。
|
Strategy for Future Research Activity |
種子の休眠性については順次検討する予定であるが、コロナウイルスの影響で研究が進まない可能性がある。遺伝解析については葉緑体DNAのシーケンスによる解析も目指す予定である。四国と北海道南部のサンプリングはできていないため、コロナウイルスが沈静化するようであればサンプリングをすすめたい。さらに、海外のサンプルももう少し増える予定であり、これらを追加し解析したうえでドクダミの生物地理的な論文も書いていきたい。コロナウイルスの影響により、調査地が閉鎖中のため、花の結実実験ができないが、2年分の成果をまとめていけるようにしたい。
|
Causes of Carryover |
知り合いの研究者に協力をお願いし、サンプリングを代子してもらったため、旅費が削減された。また知り合いのいない四国については野外調査を2020年度に変更したため。
|