2019 Fiscal Year Research-status Report
暖温帯林共存樹種の葉のフェノロジーと被食率、生産性の関係に基づく温暖化影響の予測
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19K06130
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
長田 典之 名城大学, 農学部, 准教授 (80400307)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フェノロジー / 常緑樹 / 落葉樹 / 生産性 / 温暖化 |
Outline of Annual Research Achievements |
温帯地域において樹木の開芽・展葉タイミングは個体の生産性に影響する主要因である。共存する常緑広葉樹と落葉広葉樹を比較すると、一般に落葉広葉樹のほうが開芽時期が早いことが知られている。植物の生産性に着目すると開芽時期よりも葉の成熟時期(生産性が最大になる時期)が重要であるものの、同所的に共存する常緑広葉樹と落葉広葉樹の葉の成熟期の差や、葉の開芽から成熟期の種間差と被食率の関係は不明である。本研究では、愛知県豊田市の暖温帯二次林の林床に共存する常緑広葉樹と落葉広葉樹を対象として、2019年3-7月にかけて毎週展葉フェノロジーを調査するとともに定期的に葉を刈り取って葉の形質と被食率の季節変化の関連を調べた。 この結果、平均的な開芽時期は落葉樹では4月上旬、常緑樹では4月中旬であり、その差は10日程度であったのに対し、展葉完了時期は落葉樹では4月下旬、常緑樹では5月中ー下旬であり、差は25日程度だった。また、LMAは展葉初期に減少し、その後やや増加して一定になるパターンの種が多かったものの、落葉樹と常緑樹で一貫した傾向の差は見られなかった。窒素濃度は初期に急激に減少し、定常に達する種が多く、初期の減少の度合いは落葉樹のほうが常緑樹よりも大きい傾向が見られた。窒素濃度を葉の成熟度と仮定すると、落葉樹よりも常緑樹のほうが展葉完了時期と葉の成熟時期の差が大きかった。このことから、多くのフェノロジー研究において着目されるような開芽時期や展葉完了時期をもとに生産性の差を判断すると、その差を過小評価する可能性があることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は暖温帯常緑広葉樹林に共存する常緑樹・落葉樹多種について、フェノロジー調査及び葉の形質の季節変化の測定を行うことによって、常緑樹と落葉樹の差を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度以降は初年度に行うことができなかった葉の防御物質濃度の季節変化を行い、被食率と対応付ける予定である。
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Causes of Carryover |
旅費についてはレンタカーを借りなかったために安く済んだ。また、アルバイトを雇って分析を行う計画を立てていたが、分析を申請者自身が行ったためにアルバイト代を消費しなかった。次年度以降には葉の防御物質を測定するためにアルバイトを雇う予定である。
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