2021 Fiscal Year Research-status Report
The contribution of volcanic ash in the Ca cycle in Japanese forest ecosystems.
Project/Area Number |
19K06132
|
Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
越川 昌美 (金尾昌美) 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 主幹研究員 (80291045)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 未来 国立研究開発法人国立環境研究所, 地域環境保全領域, 主任研究員 (50455250)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ストロンチウム同位体 / 火山灰 / 土壌 / 植物 / 森林 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、火山灰の混入程度と地質が異なる複数の地域において、森林の植物のストロンチウム(Sr)同位体比を分析することにより、火山灰が植物へカルシウム(Ca)を供給する機能の重要性と普遍性を示すことである。これまでに、火山灰起源Caの影響を強く受ける指標植物として笹が適しているとわかったこと、笹も渓流水も土壌に混入した火山灰由来のSrと母岩由来のSrを含んでいるが渓流水の方が母岩由来成分と長時間接触した地下水を含むと考えられることを踏まえ、笹と渓流水のSr同位体比を比較することにより、植物に対する火山灰由来Srの寄与を示すことができると予想した。そこで、2021年度は笹と渓流水の多地点調査を実施した。 調査は、栃木県雨巻山のチャート地域および砂岩地域、茨城県筑波山の花崗岩地域、斑レイ岩地域、変成岩地域の全8地点で行った。いずれも、群馬県赤城山の約3万年前の噴火による火山灰が降下した地域であり、赤城山からの距離および地形に応じて土壌中の火山灰混入量が異なる。どの地点も、母岩の方が火山灰よりも87Sr/86Srが高いことを確認済である。森林の笹および渓流水のSr同位体比(87Sr/86Sr)を分析したところ、6地点で渓流水の方が笹よりも高い87Sr/86Srを示した。このうち3地点では、笹の87Sr/86Srは、大気降下物由来の87Sr/86Srより低かったため、火山灰の寄与があることが明らかであった。ただし、分析上の問題が存在したため、次年度も課題を継続して、結果を再確認することにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Sr同位体分析において、前処理のSr分離操作の回収率が低く機器の信号が低くなる、などの問題が生じたことにより、データが得られない、あるいはデータの信頼性が低い、という場合があったため、再分析が必要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度に分析に問題が生じた森林の笹および渓流水のSr同位体比(87Sr/86Sr)を再度分析する。前処理において、Srカラムに試料を投入する前に、試料の硝酸分解を十分に実施して硝酸以外の溶媒を除くことにより、Sr分離操作の回収率改善を試みる。また、確実にデータを得るために、複数検体を作成して機器分析を実施する。以上により得たデータに基づいて、「日本の森林の植物は、基盤岩のCa供給能が低い地域では火山灰起源Caが重要なCa供給源であるが、基盤岩のCa供給能が高い地域であっても火山灰起源Caを含んでいる」ことを示し、火山灰が植物へCaを供給する機能の重要性と普遍性を明らかにする計画である。
|
Causes of Carryover |
感染症対策による出張自粛により旅費の余剰が生じたこと、他方で分析上の問題が生じ再分析が必要になったことから、当該年度に生じた余剰の旅費を活用して次年度に再分析を実施する計画である。
|
Research Products
(1 results)