2021 Fiscal Year Research-status Report
Understanding the mechanism in paradox of tropical seasonal forest: does climate change affect its sustainability?
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19K06135
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
飯田 真一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70375434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 勤 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80304369)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生態水文学 / カンボジア / 熱帯季節林 / 樹木の吸水深度 / 蒸散 |
Outline of Annual Research Achievements |
カンボジア国乾燥落葉林における土壌サンプルを用いて室内実験を行い、間隙率、圃場容水量、永久シオレ点、水分特性曲線等の土壌の物理性に関するデータを得た。当該サイトの土壌のA層は深度20cmまで分布しており、それ以深は粘土質のB層となっているが、深度に関係なく、間隙率は42~46%であった。他方、深度20cmのA層土壌について、pF=1.7の含水率は37%、pF=2.4では24%まで低下したが、B層土壌はpF=2.4においても40%以上の含水量を保持することが分かった。B層は粘性の高い緻密な粘土質土壌であるために、A層とは明らかに異なる水分特性曲線を示すことが分かった。土壌体積当たりの根の長さは深度20cmでは1.9cm/cm3であったが、B層では約0.4cm/cm3で一定値となり、深度110cmにおいても根系が確認された。この傾向は、土壌断面での目視による根量の実測値とほぼ同様であった。乾季の厳しい乾燥状態を乗り切るために、樹木は地中深くまで根系を発達させていることが分かった。 同位体メカニスティックモデルのうち、上層木の蒸散プロセスに関わるサブモデルの再現性チェックを行った。同モデルでは、気象データ(温湿度、日射量、長波放射量、降雨量等)および葉面積指数や樹高を入力値とし、また、樹液流速測定による蒸散量に基づいて得た気孔コンダクタンスを与えた。葉面積指数がほぼ一定値を示す雨季において、同モデルは上層木の蒸散量を高精度に再現可能であった。当該樹種は乾季の中盤にかけて葉を落とすが、その直後の乾燥状況が継続した状態で展葉し、蒸散活動を再開する。このような乾季における蒸散量の変化傾向についても良好に再現可能であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、カンボジアの熱帯季節林における現地調査および土壌・枝・地下水のサンプリングに立脚しているが、コロナ禍の影響で、R2年度に引き続き今年度も渡航することができなかった。このことにより、進捗に遅れが生じている。初年度のサンプルを用いて分析を進めるとともに、同位体メカニスティックモデルの試行を推進することで進捗状況の悪化を最小限に留めた。
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Strategy for Future Research Activity |
カンボジア国森林野生生物研究所に所属する海外研究協力者(カウンターパート)が回収したデータを精査した結果、いくつかの計測センサーに不具合が発生したことを把握している。渡航可能となった場合に迅速にセンサーの交換が可能となるように、当該機器の準備を進める。 初年度に現地から輸入した土壌を用いて、可能な限りの室内実験を行い、その結果に基づいて現在までに取得したデータの精度を検証する。その上で、土壌水分収支を検討し、乾燥落葉林の吸水深度について解析を行う。 同位体メカニスティックモデルによる上層木の蒸散活動の再現は、今年度までに良好に再現できる状況となった。来年度は、同モデルの適用をさらに深化させ、樹木の吸水深度について検討を行う。そして、実測値データに基づく土壌水分収支との比較検討を進める。
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Causes of Carryover |
本課題では、カンボジア国の熱帯季節林における現地計測データが必要不可欠である。特に、現地での枝・土壌・地下水サンプリングは雨季と乾季について行う必要があるため、年2回の渡航が必要となる。カンボジア国は治安上の懸念も伴うことから、複数名での渡航および運転手付きの自動車のレンタルを欠かすことはできない。実際に配布された研究費は、申請時よりも減額されていることから、課題実施期間の4年間を通じて、上述した渡航のための費用を確保するために、初年度の経費執行を抑え、計画的に次年度(R2年度)以降に繰り越した。しかし、新型コロナウイルスの影響のために、R2・R3年度には1度も渡航することができず、旅費が発生しなかったため、予算の繰り越しが発生した。また、新型コロナウイルスの影響を鑑みて課題実施期間を1年間延長した。現地カウンターパートが回収した計測データを精査して不具合が発生した計測機器をリストアップし、渡航が可能となった段階で迅速に交換ができるように計測機器を準備する。
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[Presentation] Contribution of understory vegetation to evapotranspiration in a tropical dry forest, Cambodia2021
Author(s)
Shin'ichi Iida, Takanori Shimizu, Koji Tamai, Naoki Kabeya, Akira Shimizu, Eriko Ito, Yasuhiro Ohnuki, Sophal Chann, Delphis Levia
Organizer
JpGU Meeting 2021, AHW20-P01.
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