2022 Fiscal Year Research-status Report
Understanding the mechanism in paradox of tropical seasonal forest: does climate change affect its sustainability?
Project/Area Number |
19K06135
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
飯田 真一 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70375434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 勤 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80304369)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 生態水文学 / カンボジア / 熱帯季節落葉林 / 樹木の吸水深度 / 蒸散 |
Outline of Annual Research Achievements |
同位体メカニスティックモデルによる吸水深度の試算を行うとともに、土壌の物理性を表す永久シオレ点と圃場容水量を考慮した土壌水分指標を求め、乾季における利用水源について検討を行った。
カンボジア国の熱帯季節落葉林で収集されたデータを入力値として、同位体メカニスティックモデルを用いて土壌水の酸素安定同位体比の変動をシミュレートした。同モデルには、当該林分で実測された樹液流速データに基づいて定式化された樹冠コンダクタンスのサブモデルが含まれている。再現された土壌水の酸素安定同位体比と、供試木3個体(Dipterocarpus tuberculatus、Shorea obtusa、Terminalia alata)から採取した枝を真空蒸留して抽出した水の酸素安定同位体比を比較し、吸水深度の試算を行った。その結果、吸水深度は0.6~1.2mの範囲となった。一方、現地で実測された土壌水の体積含水率データを元に、土壌水の水収支について検討を行った。樹木根系が吸水可能な土壌水は永久シオレ点よりも水ポテンシャルが大きい。このことに着目すると、吸水可能な水分量の最大値は圃場容水量に相当する体積含水率から永久シオレ点における値を差し引いたものになる。この値に占める、実際に吸水可能な土壌水分量の割合(relative extractable soil water,REW)を求めると、乾季中盤以降では深度60cm以浅のREW値がゼロもしくは負となることが分かった。このことは、深度60cm以浅から樹木は土壌水を吸水できないことを意味しており、同位体メカニスティックモデルによる試算値と良い対応を示した。深度60cm以深では、REW値は乾季を通じて正の値を示しており、乾季における展葉後の蒸散活動の利用水源となっている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、カンボジアの熱帯季節落葉林における現地調査および土壌・枝・地下水のサンプリングに立脚しているが、コロナ禍の影響で2020年2月以降渡航ができない状態となっていた。今年度は10月および1月に、2年半ぶりとなる現地渡航を行い、劣化した現地計測システムのセンサー類の換装を進めた。これによって現地計測機器の測定精度は改善したが、進捗はやや遅れた状況にある。なお、これまでに取得したデータに基づいて同位体メカニスティックモデルの適用を進め、進捗の悪化を最小限に留めた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に設置した樹液流速センサーおよび土壌水分センサーによる計測を高い精度で継続させる必要がある。このため、雨季と乾季に現地へ渡航して計測機器類の稼働状況を確認するとともに、必要であれば計測機器類の交換を行う。また、海外研究協力者の協力を仰ぎ、突発的事象(強風やそれに伴う倒木等)の発生情報を電子メールで得ることで、現地での計測機器類交換作業に必要となる物品を可能な限り事前に把握する。 得られた樹液流速データおよび土壌水分量データから乾季における樹木の蒸散量の水源を検討するとともに、同位体メカニスティックモデルを用いて根系の吸水深度を算出し、乾季における樹木の水利用の実態を解析する。
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Causes of Carryover |
本課題は、カンボジアの熱帯季節林における蒸散量や土壌水分量等の現地計測のほか、枝や土壌サンプルから抽出される水の安定同位体比の測定に立脚している。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、2022年10月中旬まで現地に渡航することができなかったため、研究計画がやや遅延し、次年度使用額が生じた。次年度使用額を利用して、早い段階で現地に渡航し、劣化した計測機器類の交換を行い、高精度な計測データの収集に努める。
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