2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06137
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
木下 晃彦 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70533983)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 博物館標本 / 新産地 / 生物地理 / 黒トリュフ / ゲノムワイドSNP |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の目標は、黒トリュフ2種の子実体標本の収集、および発生地の環境を調べることだった。また研究期間を通じ、収集できた生標本から菌株を確立することも目標として挙げた。 標本収集では、国内で最も多くの標本を保有する博物館から87点(国立科学博物館24点、神奈川県立生命の星・地球博物館51点、大阪府立自然史博物館12点)、そしてこれまで標本が得られていなかった地域(東京、山形、山梨、秋田、青森)から15点の、合計102点の子実体標本を入手することに成功した。それらの標本からDNAを抽出してrDNA ITS領域を対象にPCRを行った結果、およそ半数の標本でDNA解析が可能であることをがわかった。DNA増幅しない理由として、博物館標本の古い標本は、燻蒸によりDNAが断片化されたことが理由として考えられる。また中国雲南省で発生するTuber himalayense、T. indicumの子実体発生5地点からも合計12標本を入手することに成功した。 一方、国内の野外から採取した子実体標本をすりつぶして胞子懸濁液を作製し、無菌的に発芽させたコナラ、ツブラジイ、アラカシに接種したところ、およそ4ヶ月後に外生菌根を形成した。外生菌根から菌株を確立するため、顕微鏡下で菌根チップを切り出し、菌根表面の土壌粒子を水道水で洗い落とした後、滅菌水やエタノールなどで表面洗浄および殺菌してMMN培地へ置いた。多くの菌株では、コンタミが多く発生したものの、いくつかの菌株ではトリュフ様の菌糸を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、標本の収集および発生地環境を調べるためのデータロガーの設置を主な目標としていた。前者はほぼ目標を達成できているものの、後者はやや遅れている。理由として、子実体発生が10月から翌年にかかるため、調査地の利用許可申請までにかかる時間を十分に確保できなかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
計画では、2020年度も標本の採取を続けてそれまでに得られた標本を対象に、次世代シーケンサーによる解析を進める予定だった。 今後もサンプリングを続けるなど計画通りに進めるが、昨今の状況を踏まえて調査旅行は控え、現有するサンプルで解析を進める方が適切であると考えている(今年度収集した標本を含め、現在まで30地点以上から取得した200標本程度を保有している)。したがって、基本的に2019年度までに得た標本を対象にDNAを抽出し、PCRを行い、次世代シーケンサーによるMIG-seq解析を進める予定である。 子実体発生地の環境データを取得できていないことへの対応として、古澤(森林総合研究所研究賞報告、2020)で得られている土壌環境データを元に予備的に解析した上で判断する。
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Causes of Carryover |
標本の収集旅費、および輸送量などに充てる予定だった金額の繰越である。しかしながら未調査5地域から、在野の研究者のご協力により標本を輸送していただいたため、今年度は、繰越額および当年度の予算で、次世代シーケンサーの解析に充てる。これにより、大量のサンプルを対象に精度の高い解析を行う予定である。
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