2019 Fiscal Year Research-status Report
線虫をもって線虫を制する―捕食性線虫を用いた新規マツ枯れ制御技術の開発
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19K06145
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹内 祐子 京都大学, 農学研究科, 助教 (80452283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 菜摘 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70435585)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マツ材線虫病 / マツノザイセンチュウ / 捕食性線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
病原線虫マツノザイセンチュウが媒介昆虫によってマツ属樹木に導入されることで起こるマツ材線虫病は、白砂青松を要する日本古来の景観を壊滅状態に追い込み、今なお拡大を続けている。本病は感染後の致死率が高い上に伝播力が極めて高いため一旦被害が発生すると制御することは難しく、有効な防除策の確立が急務である。本研究では、マツノザイセンチュウと同じAphelenchoididae科に属する近縁種Seinura cavernaのもつ高い捕食能に着目し、線虫における捕食行動研究のモデル化に必要な基礎情報を集積するとともに、マツノザイセンチュウの個体群抑制技術に基づく本病の新規防除法開発を目指す。 令和元年度は、まずS. caverna単一個体からの増殖を15世代繰り返すことにより、遺伝的均質性が高いと想定される純系株を作製した。この線虫株を今後の実験株及びゲノム(遺伝子)解析用材料として用いる。 また、S. cavernaの安定供給を可能にするため、Acrobeloides属の単為生殖種を餌として安定的に培養可能であることを確認すると同時に、餌密度を調整することにより大量培養法を確立した。 続いて、有害種個体群に対する捕食者の影響を明らかにし、生物防除資材としての可能性を検討するため、培地試験及び木材基質を用いた培養試験を行った。この結果、培地と木材のいずれにおいても、S. cavernaがマツノザイセンチュウ個体群密度を劇的に低下させることが明らかになった。次年度はより大型の木材を用いた試験を行う予定である。 また、野外調査において新たにS. caverna京都産2株、Seinura属線虫2種を分離し培養株を確立した。これらについては、野生型株を維持しているほか純系株の作製を進めており、S. cavernaタイプ株の比較系としての利用を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、本研究の基盤を整備するため実験材料となるSeinura caverna株の準備や実験系の開発を中心に行った。なお、研究計画を一部見直し、当初予定していたゲノム解析の代わりに大量培養法の確立を既に完了した。おおむね計画通りに進行しており、引き続き研究を遂行できる状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題はおおむね順調に進展しているため、若干の修正を加えながら、おおむね研究計画に沿って遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
研究代表者の産育休取得により、代表者配分の助成金に未使用が生じた。それに伴ってゲノム解析の実施時期を令和2年度以降に変更しているため、当該助成金をその解析費用に充てたい。
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