2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K06146
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
岩永 史子 鳥取大学, 農学部, 講師 (50548683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芳賀 弘和 鳥取大学, 農学部, 准教授 (90432161)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 樹液 / 冬季 / カエデ / 低温耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初春にカエデ属樹木から流出する樹液は高濃度の糖を含み、これらの糖が木部に含まれる段階で樹液の流出機構にも関与することが示唆されている。しかし、初春の木部内糖の代謝や転流に関する知見は乏しい。本研究では、カエデ種の低温期の糖代謝特性と樹液流出パターンとの関係性を明らかにするため、以下の調査を行った。 鳥取大学農学部FSC教育研究林「蒜山の森」に自生するイタヤカエデとウリハダカエデ(各6個体)から、2019/01/18~2019/04/24の期間で樹液を採取した。樹液流出観測中は研究林敷地内に設置した気象ステーションにて観測を行った。木部内糖濃度の測定のため、樹液採取を行った2種のカエデから直径約1cmの枝を採取した(各9個体)。採取は2018/12/14~2019/04/17に10回行った。枝の樹皮を剥ぎ木部試料として、木部試料の一部に純水を注入・洗浄して洗浄木部とした。未洗浄の木部試料と樹皮はそのまま分析試料とし、各部位の木部内糖濃度を測定した。 カエデ二種の樹液流出期間は1/20~3/21の約2か月間で、流出期間に種による明らかな差はなかった。一方で、木部と樹液に含有される糖組成や時間的変動にも顕著な差は認められなかった。一個体から流出する樹液総量はウリハダカエデの方がイタヤカエデよりも多く、樹液糖濃度は低いことが報告されているが、本年の調査からも同様の結果が得られた。木部内糖濃度に種間差は認められなかったこと、また洗浄木部と非洗浄木部の糖濃度差分から推定される木部内糖移動量に両種の明確な差は認められなかった。以上のことは、糖が樹液流出に寄与するという仮説から、両種の流出期間がほぼ同時期であったことと一貫性が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、野外に生育するカエデ樹種の樹液流出の観測と、木部内・樹液内糖濃度を時系列的に観測した。木部内糖の代謝と転流については、本年の調査で分析手順の選定が進んだ。また解析対象となる糖の新しい分析環境が整ったため、これまでの検討条件をもとに今後研究が進むと予想している。今度、圃場での操作実験が主体になるため、ひきつづき系の立ち上げを進める。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書に沿った進行を行っているが、2020年3月中ごろからコロナウイルス感染症対策の外出自粛のため、春季の調査は中止した。秋季以降の野外観測の予定は未定であるが、上記の圃場実験での計測・分析を通じて糖代謝・転流の種特性把握を進める。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症対策のため、国内出張を取りやめたこと、また春季の調査を取りやめたため、これらの調査準備のための物品費が繰り越しとなった。
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