2023 Fiscal Year Annual Research Report
森林の急激な環境変化が野生植物の生態的・進化的変化に与える影響
Project/Area Number |
19K06150
|
Research Institution | Teikyo University of Science & Technology |
Principal Investigator |
森長 真一 帝京科学大学, 生命環境学部, 准教授 (80568262)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平尾 聡秀 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 講師 (90598210)
石塚 航 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 森林研究本部 林業試験場, 主査 (80739508)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | シカ不嗜好性植物 / 集団ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、日本の森林では、急激にシカの個体数が増加している。それに伴い、シカ嗜好性植物は減少し、一方でシカ不嗜好性植物の個体数は増加し、これが生態系全体に影響し、観光や産業にも負の波及効果をもたらしている。そこで本研究では、センリョウ科のシカ不嗜好性植物2種を対象に、シカによってもたらされた森林の急激な環境変化が、野生植物の生態的・進化的変化に与える影響を明らかにすべく研究を行ってきた。最終年度である今年度は、縮約的な手法による集団構造解析とシカの食害が植生に与える影響を明らかにするための野外調査を行った。 これまでに採取したヒトリシズカとフタリシズカについてDNAを抽出し、これらのサンプルを対象にDNBSEQシーケンサーを用いた縮約的手法による集団ゲノム解析を行った。その結果、非常に近縁で同所的に生育するヒトリシズカとフタリシズカであっても遺伝的な距離が大きく離れており、少なくとも大規模な遺伝子流動は生じていないことがわかった。また、各種の遺伝的構造は、集団ごとに大まかに区別することができ、距離による隔離がはたらいていた。加えて、両種は花の構造に多少の違いが見られるが、遺伝的構造には際立った違いは見られなかった。 シカの食害が生じている場所とそうでない場所を含む複数の調査地において、開花植物を中心とした植生調査を行った。その結果、シカの個体群密度に比例して、開花植物の種数が変化することがわかった。また、種数への影響だけでなく、シカ密度が高い場所では、シカ不嗜好性植物であっても開花期間が短くなる傾向が見られた。 本研究では、縮約的な手法を用いて解析を行ったが、将来的には全ゲノムによる集団ゲノム解析により、さらに高精度な分析が望まれる。また植生調査については、継続的な調査を行うことにより、シカ密度の増加に伴う変化を経時的に追跡する必要がある。
|
Research Products
(5 results)