2020 Fiscal Year Research-status Report
森林性キノコバエ類とその天敵の機能に注目したシイタケ栽培地の生物間相互作用の解明
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19K06152
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
末吉 昌宏 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (80435586)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スギ人工林 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年4月から2020年7月までの間、月1回現地で調査を行った。昨年度の調査と合わせて、調査地での通年のシイタケ、害虫キノコバエ類、捕食者(寄生蜂、鳥類、クモ類)の発生消長に関するデータを得た。また、シイタケ害虫キノコバエ類に対する、寄生蜂による寄生率、クモ類による捕獲効率の解明を試みた。 シイタケは1~2月に発生のピークがあった。ナカモンは3月から成虫が捕獲されたが、最も多く個体数が採集された粘着シートで5月に発生のピークが見られた。ナカモンの寄生蜂であるシリボソクロバチは4月以降採集されたが、発生のピークは5月以降であった。鳥類は11月から5月までの間、主にシロハラ、シメ、トラツグミが写り、シロハラとシメが地表を弄る様子が2,3,5月に撮影された。クモ類は主にウズグモ、コシロカネグモ、サラグモ類が得られた。コシロカネグモは10月から5月までの間、体長1~2mm程度の幼生であり、3月と4月に観察したコシロカネグモの巣網それぞれ247ケと223ケのうち、1ケでキノコバエ類、15ケでクロバネキノコバエ類が捕獲されている様子が観察された。6月にほだ場の調査地2箇所で採取したシイタケ子実体4ケから47個体のナカモン幼虫を得た。これらから26個体のナカモン成虫と2個体のシリボソクロバチ成虫が羽化した。 ホダ場で発生するナカモンの直接の捕食者はシリボソクロバチであった。今回のシリボソクロバチの寄生率は1割に満たなかったが、羽化試験の反復数が少ないため、追加試験が必要である。ナカモンの成虫が発生するよりも早い時期に活動している捕食者は鳥類とクモ類である。鳥類はホダ場に飛来し、地表で採餌行動するが、実際にナカモンを選択的に捕食しているか不明である。コシロカネグモは3月から5月までは幼若な幼体であり、ナカモンは巣網でまだ観察されていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査地でトラップおよびカメラの設置とキノコバエ類の寄主となるきのこ類および天敵となるクモ類の採集を当初計画通りに行った。現地のシイタケ、キノコバエ類、寄生蜂、鳥類の発生消長を把握し、採集・記録された昆虫類、鳥類の同定を進めるなど、当初の目標を達成した。なお、予定していた国際学会参加と海外研究施設の訪問はコロナウイルス感染症拡大により延期した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021 年4月から同年6月までおよび、2022年1月から3月までの間、捕食者による害虫キノコバエ類の捕食量を把握するため、以下の試験を行う:①ホダ場で定量的に採集したシイタケから害虫キノコバエ類幼虫を採集し、それらを水苔とともに開放容器に入れ、ホダ場および森林内の調査地に置いて自動撮影カメラで鳥類などによる捕食を2日間観察・記録する。回収後、残った個体数を計数して、キノコバエ類の被食量を明らかにする;②調査地内のクモ類の巣網に捕獲された昆虫類を採集し、クモ類による害虫キノコバエ類の捕食量を明らかにする。③ホダ場で定量的に採集したシイタケから脱出した害虫キノコバエ類幼虫の個体数を把握し、それらから羽化したシリボソクロバチの個体数からキノコバエ類への寄生率を明らかにする。 調査地で水盤トラップと捕虫網、粘着シートを用いて、キノコバエ類とシリボソクロバチを捕獲する。森林タイプおよびホダ場と森林の間でシリボソクロバチの個体数を比較し、害虫キノコバエ類の存在がシリボソクロバチの分布に影響を及ぼしているかを明らかにする。 ドイツ昆虫学研究所を訪問して現地の標本を参照しながら、昨年度得られたクロバネキノコバエ類の同定を行う。
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Causes of Carryover |
予定していた国際学会参加がコロナウイルス感染症拡大により延期され、海外研究施設の訪問を延期したため。
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