2019 Fiscal Year Research-status Report
土壌水分供給能からみた極めて高い樹高を有する熱帯平地乾燥常緑林の成立条件
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19K06153
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
大貫 靖浩 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10353616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥山 淳平 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00582743)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 土層厚 / 土壌含水率 / 土壌硬度 / 乾燥常緑林 / 乾燥落葉林 / 大型土壌断面 / 樹高測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
カンボジア王国コンポントム州に位置する、極めて高い樹高を有する平地乾燥常緑林を研究対象とし、平地乾燥常緑林が立地する非常に厚い土壌層に着目して、熱帯モンスーン気候下の他地域よりも樹高が高くなるメカニズムや、極端気象下での平地乾燥常緑林の維持機構を、降雨パターンと地下水位変動、深層土壌の水分保持能力の実測値を検証値として、土壌水分移動シミュレーションにより、長く厳しい乾季における樹木への潤沢な水供給メカニズムを解明する。 本年度は、コンポントム州平地乾燥常緑林試験地内に位置する、既存の深さ9mの大型土壌断面(シルト質土壌)内で、土壌硬度および土壌含水率を雨季末期の12月初旬に測定し、前回同時期に測定した2017年11月下旬のデータと比較検討した。土壌硬度は地表面直下の深度0.2mから地下水面(深度6.0m)直上の深度5.6mまで「堅」~「頗る堅」であった。これに対し、前回(地下水面深度:3.4m)の土壌硬度は「軟」~「やや堅」であり、同じ雨季末期でも明瞭な土壌硬度の違いが認められた。土壌含水率は、今回深度方向に緩やかに増加していたが、前回は地下水面直上の土壌含水率の増加が顕著であった。2017年11月の地下水面は、観測期間(2011年12月~)中の同時期としては最も地下水面が高く、エルニーニョの影響が大きかった2019年12月は2番目に低い。前回と今回の測定で、雨量の多寡によって土壌含水率や土壌硬度がいかに変動するかを明瞭なデータとして示すことができた。対照地である、近傍の土層の厚い平地乾燥落葉林に、新たに深さ4mの大型土壌断面(砂質土壌)をバックホウで掘削した。掘削直後の土壌断面観察により、根系の最大到達深度は-2mで、平地乾燥常緑林の1/4程度までしか到達していないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、平地乾燥常緑林試験地内の深さ9mの大型土壌断面内で、土壌硬度および土壌含水率の雨季と乾季の測定値を蓄積した。対照地である、近傍の土層の厚い平地乾燥落葉林(疎林)に、新たに深さ4mの大型土壌断面をバックホウで掘削し、土壌断面観察により根系の到達深度を確認し、地下水位観測を開始した。土層の厚さの影響を比較するため、土層の薄い既存の平地乾燥落葉林試験地4ha植生プロット内の多地点で、2019年11月に表層土壌の含水率測定を実施し、4~21%の値を得た。特に、土層が0.5m未満と非常に薄い丘陵地で、平地乾燥常緑林試験地の大型土壌断面と同程度に低く、土層が1.5m以上と比較的厚い流路近傍で高い傾向を示した。 一連の土壌調査に加えて、新旧2つの大型土壌断面付近の落葉樹と常緑樹の樹高測定を実施し、平均で常緑樹が20m以上樹高が高いことが確認できた。双方ともに数年前、違法伐採によりかなりの数の高木が消失しているので、過去に航空機により測定された樹高データを入手し、現在解析中である。 以上のように、本年度計画していた現地調査およびデータ解析は、ほぼ滞りなく完了できたため、本研究はおおむね順調に進捗していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度末に掘削した、土層の厚い平地乾燥落葉林内の大型土壌断面観察を詳細に行うとともに、深度別の土壌硬度・含水率測定を実施し、根系到達深度との関係を定量的に明らかにする。平地乾燥常緑林内の地下水位測定と深度別土壌硬度・含水率測定、平地乾燥落葉林内の土壌含水率の多点測定を継続する。蓄積した土壌水分データに、平地乾燥常緑林内のタワーで観測された蒸発散量の実測値をパラメータ化して加え、土壌水分移動シミュレーションにより深層土壌層内の水分貯留量を算出する。常緑樹と落葉樹の樹高データの実測値を、既存の樹高データに加える形でさらに蓄積し、土層厚・土壌物理性・地下水位変化との対応関係を検討する。
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Causes of Carryover |
同行者とのスケジュール調整や、日本国内での出張や会議との兼ね合いにより、当初計画していたカンボジア出張日程を2回とも短縮せざるを得なかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、当初予定していた渡航回数を1回から2回に増やし、本年度同様に雨季と乾季の調査・測定を実施する予定である。
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