2022 Fiscal Year Research-status Report
土壌水分供給能からみた極めて高い樹高を有する熱帯平地乾燥常緑林の成立条件
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19K06153
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
大貫 靖浩 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究専門員 (10353616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥山 淳平 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00582743)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地下水位変動 / 大型土壌断面 / 平地乾燥疎林 / 樹高分布 / 保水能 |
Outline of Annual Research Achievements |
カンボジア王国コンポントム州に位置する、極めて高い樹高を有する平地乾燥常緑林を研究対象とし、非常に厚い土壌層に着目して、熱帯モンスーン気候下の他地域よりも樹高が高くなるメカニズムや、異常な寡雨や平年を大きく上回るような多雨などの極端気象下での平地乾燥常緑林の維持機構を解明する。 新型コロナウィルス感染症の影響で、今年度も当初計画していたカンボジアでの大型土壌断面観察等が実施できなかった。地下水位測定については、対照地である近傍の土層の厚い平地乾燥疎林(構成樹種は常緑樹)で、2020年2月初旬の大型土壌断面の掘削直後から毎週1回の定点撮影をカウンターパートに依頼して画像データを蓄積した。2022年は前年からのラニーニャ現象の影響で降雨量が多く1月17日まで地下水面が存在し、4月4日に一気に深度1m付近まで上昇した。8月8日には地表面直下に達し、10月10日まで地下水面が深度50cmを下回らなかった。その後徐々に低下に転じ、12月19日にほぼ水面は無くなった。このように、週1回の定点撮影により土層の厚い平地乾燥疎林の地下水位変化とラニーニャ現象との関係を視覚的に明らかにすることができた。 過去に取得した航空機Riderデータおよび現地での実測データを用いて、土層の厚い平地乾燥常緑林と、平地乾燥疎林の樹高分布を比較検討した。平地乾燥常緑林では、違法伐採の影響でランドマーク的な高木は相当減少していると思われるものの、樹高は30~50mの範囲にあるものが大部分を占めていた(平均樹高35.5m)。これに対し平地乾燥疎林では、樹高は10~19mであり(平均樹高13.4m)、明らかに樹高が低かった。詳細な解析は行っていないが、同じ程度の土層厚でも平均樹高が2倍以上異なる要因として、土性(シルト質:砂質)による土壌の保水能の違いと、標高や微地形の差による地下水位変動の違いが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本課題は、カンボジア王国の平地乾燥常緑林と落葉林における大型土壌断面調査をはじめとする実測データの収集、および土壌水分移動シミュレーションによる長く厳しい乾季における樹木への潤沢な水供給メカニズムの解明を目的としている。 新型コロナウィルス感染症拡大の影響で本年度も現地へ渡航できず、当初計画していたカンボジアでの大型土壌断面観察、深度別土壌硬度・含水率測定が実施できなかった。地下水位測定については、対照地である近傍の土層の厚い平地乾燥疎林で、大型土壌断面の毎週1回の定点撮影をカウンターパートに依頼して画像データを蓄積し、地下水位変動と樹木の展葉・落葉状況、下層植生の繁茂・枯死状況を把握した。樹高については、過去に取得した航空機Riderデータおよび現地での実測データを用いて、土層の厚い平地乾燥常緑林と、平地乾燥疎林の樹高分布を比較検討し、両者が明らかに異なることを確認できた。その理由としては、土壌の保水能と微地形による地下水位変動の違いが考えられた。 以上のように、コロナ禍の現地への渡航が非常に困難な状況が続き、現地での実測データが取得できなかったため、本研究課題の進捗はやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
土層の厚い平地乾燥疎林内の大型土壌断面観察を、週1回の定点撮影により継続するとともに、樹木の展葉・落葉状況、下層植生の繁茂・枯死状況を画像から時系列的に取得し、地下水位変動との関係を解析する。現在まで蓄積した土壌水分データに、平地乾燥常緑林内のタワーで観測された蒸発散量の実測値をパラメータ化して加え、土壌水分移動シミュレーションにより、常緑林と疎林双方の深層土壌層内の水分貯留量を算出する。常緑林と疎林の樹高データの実測値を、既存の樹高データに加える形でさらに蓄積し、土層厚・土壌物理性・地下水位変化との対応関係を解析する。 土層の厚い平地乾燥常緑林と平地乾燥疎林の深度別土壌水分、土壌硬度の同時測定が本課題では不可欠であり、雨季の測定値が不足しているため最低1回渡航してデータを蓄積し、土壌水分移動シミュレーションに向けた解析を進めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナ禍でカンボジアに渡航できなかった影響で、十分な現地調査ができなかった。土壌水分変動シミュレーションに必要不可欠な、地下水位と土壌含水率の実測値を現地で取得するため、旅費と自動車借り上げ料として助成金を使用する。
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