2023 Fiscal Year Annual Research Report
土壌水分供給能からみた極めて高い樹高を有する熱帯平地乾燥常緑林の成立条件
Project/Area Number |
19K06153
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
大貫 靖浩 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 研究専門員 (10353616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳥山 淳平 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (00582743)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 土壌水分 / 深層土壌 / 乾燥常緑林 / 乾燥落葉林 / 根系到達深度 / 土壌物理性 / 数値モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
熱帯モンスーン地域に分布する平地乾燥常緑林の、乾季の蒸散を支える土壌の水分供給能力を解明するために、数値モデルを用いてシミュレーションを行った結果、蒸発散レベルを調整することにより土壌水分変動を実測値に近づけることができた。この結果は、森林の劣化、減少、回復等の様々なシナリオを想定した、水資源の動態予測に貢献できる。 2年連続で強い乾燥が続いた2015~2016年(スーパーエルニーニョ年)を対象に、モデルの挙動を解析した。2015-2016年の降水条件を数値モデルに入力した場合、非エルニーニョ年の設定を利用しても、蒸発散レベルを下げることで、土壌水分の再現性が相応に高い結果が得られた。とりわけ、厚い土層の土壌水分動態を特徴づける値となる、下層土の飽和透水係数の重要性がスーパーエルニーニョ年においても示された。 平地乾燥常緑林(以下常緑林と記載)、平地乾燥疎林(以下疎林)、平地乾燥落葉林(以下落葉林)における土層厚、土壌水分動態、樹高の実測データを蓄積し、植生毎の違いを明らかにした。具体的には、常緑林と疎林において土層厚はともに8m以上と厚いが、土性はそれぞれシルト質と砂質で異なり、土壌水分は乾季で常緑林が深層まで非常に低い値を示した。これは、常緑林において深層土壌まで分布する根系が、乾季に吸水している証拠だと考えられた。一方落葉林では、土層は最大で2.5mと厚くなく、土壌水分は乾季で特に表層部で低かった。樹高は各林分で異なり、常緑林、疎林、落葉林の順であった。同じ程度の土層厚でも平均樹高が2倍以上異なる要因として、土性(シルト質:砂質)による土壌の保水能の違いと、標高や微地形の差による地下水位変動の違いが考えられた。落葉林では、疎林と最高樹高はほぼ変わらないものの、6~9mの樹高を有するものが全体の57%を占めていた。
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Remarks |
カンボジア王国コンポントム州に位置する、極めて高い樹高を有する平地乾燥常緑林を研究対象とし、降水量および降雨パターン、高さ60mの気象観測タワーで計測中の蒸発散量、深さ9mの大型土壌断面で毎日観測中の地下水位変動や、大型土壌断面内での根系分布・深さ20cmおきの土壌含水率の実測値を検証値として、土壌水分移動シミュレーションにより、長く厳しい乾季における樹木への潤沢な水供給メカニズムを解明します。
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Research Products
(4 results)