2021 Fiscal Year Annual Research Report
樹木内部の水・炭素輸送と樹木成長の季節・環境応答特性の解明
Project/Area Number |
19K06156
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
高梨 聡 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (90423011)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 炭素動態 / パルスラベリング / 樹液流 / 光合成 / 炭素貯留 |
Outline of Annual Research Achievements |
森林の炭素循環過程は様々な気候帯で調べられて来ているものの、土地利用改変や撹乱からの回復過程については、メカニズムに基づいた定量的な理解が進んでいるとは言い難い。本年度は、コナラとヒノキに対して幹切断や強度乾燥負荷などの強度攪乱実験を行い、その炭素輸送特性の変化について解析を行った。 コナラを対象として、その成長フェノロジーおよび炭素輸送特性について解析した。実験対象のコナラは直径約0.1m、樹高約10mであり、3月に高さ1mの位置で切断し、萌芽後の展葉・落葉パターン等について調査した。コナラは4月中旬に萌芽し始め、約30本の枝が伸長した。11月初旬から葉は色づき始め、12月初旬には葉は完全に枯れた。その後、一か月ほどで落葉し、翌年4月初旬には展葉・伸長し始めた。この展葉・落葉は切断していない成木とほぼ同様のパターンであった。幹切断年の11月に13CO2を用いたラベリング実験を行い、秋季に獲得した炭素を翌年の1月ごろまでは幹において呼吸として消費するものの、冬季にはほとんど消費せず、4月初旬ごろから再び呼吸として消費していることなどを観測した。根からもラベリングされた炭素放出が観測されており、萌芽1年目においても、根への炭素供給能力を十分に持っていると考えられた。 ヒノキ苗を用いて乾燥負荷実験を行い、乾燥負荷による樹木の炭素配分の変化を調査した。13CO2パルスラベリングによって炭素追跡を試みたところ、乾燥度が高まるにつれて、光合成量が減少していたが、光合成産物の各器官へ配分比は変化していなかった。また、根における光合成産物の割合は、乾燥度が高まると、デンプンの割合が減少し、可溶性の糖の割合が増加しており、乾燥条件下において根での膨圧を維持するための防御機構が働いていると考えられた。
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