2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K06157
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
柴田 銃江 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (10343807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 隆 北海道大学, 北方生物圏フィールド科学センター, 教授 (00183814)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 豊凶 / ミズナラ / 時系列分析 / 樹木繁殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
堅果の豊凶(異なる個体の間での同調した結実年変動)は、ブナ科樹木の更新の規模やタイミングのほか、野ネズミなどの堅果を餌とする野生動物の個体数変動に影響する。近年、豊凶性は10から数10年で大きく年代変化することが報告され始めた。地球温暖化による気温上昇などが一因とされているものの未だ確証は得られていない。また、樹木の更新や野生生物の動態にどのように波及するのかもよくわかっていない。そこで本研究課題では、(1)長期データを元に、堅果豊凶性の年代変化を定量分析し、(2)「樹木は環境変動(特に気温上昇)に伴って資源配分様式を変化させる」という仮説を検証する。さらに、(3)樹木の更新へどのように波及するのか分析する。 本年度は、上記(1)に取り組んだ。北海道、東北、関東の長期試験地において豊凶観測を継続した。このうち観測年数が最も長い東北の中居村ミズナラ試験地における約40年間(1980年から2017年)の観測データをまとめたところ、近年になるほど結実数が増えている傾向が明らかになった。さらに、ウェーブレット分析や二次対数線形自己回帰モデル(ARモデル)による時系列分析によって、豊凶周期も3、4年から2年へと短くなっていることもわかった。これらの豊凶性の年代変化と、開花期および着葉期の気温の上昇傾向(約40年間で0.8℃増)がよく対応していたことから、気温上昇による受粉成功率の向上や堅果生産に使えるエネルギー量の増加が関係していると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の初年度計画どおり、(1)堅果豊凶の年代変化の定量分析を行うとともに、(2)の検証にかかる気象条件の分析に着手できた。また、これらの分析結果を論文として公表できたことから、概ね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目では、主に(2)「樹木は環境変動(特に気温上昇)に伴って資源配分様式を変化させる」の仮説検証について研究を進める。資源収支モデルに基づいた数理シミュレーションを行い、その結果と(1)で得た豊作周期の実測値の変化パターンとを照合する。また、(3)の準備として、特に、実生更新観測を併行して実施している関東の小川試験地において、豊凶観測データの整備に着手する。
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Causes of Carryover |
論文掲載料について、外国為替の変動と追加料金対象となるカラー図表の枚数調整をしたところ、当初想定していた予定額よりも少額になった。その結果、当該年度未使用額(次年度使用額)が生じることになった。この次年度使用額については、成果発表にかかる費用として、学会大会参加費および旅費の一部にあてる計画である。
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