2019 Fiscal Year Research-status Report
きのこβ-1,6-グルカンを認識する新規受容体の同定
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19K06166
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
金野 尚武 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (60549880)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | きのこ / βーグルカン |
Outline of Annual Research Achievements |
きのこ類などの真菌類はβ-1,3-およびβ-1,6-グルカンを細胞壁主成分とする。これらβ-グルカンは生体内で免疫活性化機能を示し、経口摂取した際は低下した免疫力を補う作用をもつ。β-1,6-グルカンを含む食品は、きのこ以外に殆どない。本研究によってβ-1,6-グルカンを免疫に関与する新しい機能性分子として提唱できれば、きのこ類に新たな価値を生み出すことができ、きのこ産業、さらには林産業の活性化に繋がる。 ヒトの体内にはβ-グルカン受容体タンパク質Dectin-1が存在する。Dectin-1はセルロース等の他の多糖やオリゴ糖を認識(結合)せず、β-1,3-グルカンやβ-1,3/1,6-グルカンと強く結合する。一方で、β-1,6-グルカンとの結合は弱く、β-1,3-グルカン受容体であると考えられている。一方β-1, 6-グルカンは、きのこ類のような真菌類にしか存在せず、複雑かつ不均一な多糖複合体として存在し、単離が困難であるため研究例は少ない。申請者は、一般的な真菌類とは異なり、β-1,6-グルカンのみを構造多糖として有している真菌類イワタケから抽出物を調製したところ免疫活性化機能を示すことを明らかにした。本課題では、生体内におけるβ-1,6-グルカン認識機構を明らかにすることを目的とし、β-1,6-グルカン受容体タンパク質を同定する。今年度は、マクロファージ様細胞(RAW264.7)を各種β-グルカン多糖およびオリゴ糖で処理し、RAW264.7細胞におけるTNF-αの発現量をリアルタイムPCRによって分析することで、免疫賦活作用を評価した。β-1,6-グルカンオリゴ糖(重合度6以上)において、β-1,6-結合の2糖や海藻由来β-1,3-グルカンと比較して有意に高い作用が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
β-1,6-グルカンによる動物細胞でのサイトカイン発現を確認することができたため、おおむね順調に進展している。 現在、受容体の単離にむけた準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の成果において、TNF-αの発現が確認された、β-1,3-グルカン、β-1,6-グルカンおよびβ-1,3/1,6-グルカンで処理したRAW264.7細胞を回収し、遺伝子(RNAseq)・タンパク質(二次元電気泳動)でのβ-1,6-グルカン細胞応答を比較解析する。また、イワタケ抽出β-1,6-グルカンまたはβ-1,6-グルカンを担持したビーズを用いてカラムの作成を進める。β-1,6-グルカンとのアフィニティーによりタンパク質を精製する。
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Causes of Carryover |
RNA解析を2020年度に行うこととしたため、予算残額が発生した。
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